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フォード・ブロンコ(初代):都市と荒野を駆け抜けた名車


フォード・ブロンコ(初代)諸元データ(1966-1977年)

基本情報

寸法・重量

  • 全長:3,850 mm(1966年モデル)
  • 全幅:1,730 mm
  • 全高:1,770 mm
  • ホイールベース:2,337 mm(92インチ)
  • 車両重量:1,300〜1,500 kg(仕様により異なる)
  • 最小回転半径:約5.5 m

エンジン

  • 標準エンジン(初期モデル):

    • 種類直列6気筒
    • 排気量:2.8 L (170 cu in)
    • 最高出力:105 hp(約107 PS)
    • 最大トルク:189 Nm
  • 上位エンジン(オプション)

    • 3.3 L 直6(200 cu in):120 hp(122 PS)
    • 4.7 L V8(289 cu in):200 hp(203 PS)
    • 4.9 L V8(302 cu in, 1973年〜):205 hp(208 PS)

トランスミッション

サスペンション

  • フロント:コイルスプリング + リジッドアクスル
  • リア:リーフスプリング + リジッドアクスル

ブレーキ

  • 前輪:ドラムブレーキ(後年ディスクブレーキに変更)
  • 後輪:ドラムブレーキ

タイヤ

  • 標準サイズ:15インチスチールホイール
  • タイヤサイズ:7.35-15またはオフロード仕様タイヤ

燃料タンク

  • 容量:57 L(15ガロン)

性能

  • 最高速度:約130 km/h
  • 0-100km/h 加速:約13〜15秒(エンジン仕様による)
  • 燃費:7〜10 km/L(使用状況による)

 

 

アメリカのオフロードシーンに名を刻む伝説的なSUV、フォード・ブロンコ。その初代モデルは、1966年に登場し、以降長きにわたりファンから愛され続けてきました。ジープ CJ-5の牙城を崩し、新たなオフロード車の基準を築いたこのモデルは、単なる実用車ではなく、ライフスタイルを象徴する存在として進化してきました。

1960年代のアメリカでは、オフロードを楽しむ文化が広がりを見せ、実用性とレジャーを両立した車が求められていました。そんな中、フォードはコンパクトで機動性に優れた四輪駆動車を開発し、新たな市場を開拓しようとしました。それが初代ブロンコの誕生の背景です。本記事では、初代フォード・ブロンコの特徴や開発背景、そして現在に至るまでの人気の秘密について詳しく解説していきます。

初代ブロンコの誕生とコンセプト

フォード・ブロンコは、フォード社がオフロード市場に本格的に参入するために開発したコンパクトSUVです。当時、アメリカではジープ CJシリーズやインターナショナル・ハーベスターのスカウトといったオフロード車が人気を集めており、フォードはこの分野での競争力を高めるため、新たなモデルを投入する必要がありました。

ブロンコの開発にあたり、フォードは「G.O.A.T.(Goes Over Any Terrain)」、すなわち「どんな地形でも走破する」という設計理念を掲げました。開発チームは、既存のピックアップトラックシャシーを流用せず、新たに専用設計のラダーフレームを開発し、オフロード性能とオンロードでの快適性の両立を図りました。また、ホイールベースはわずか92インチとコンパクトであり、小回りの効く操縦性を実現していました。

エンジンは、当初は直列6気筒2.8Lが標準搭載されましたが、後に3.3L、そしてよりパワフルな4.7L V8エンジンがオプションとして用意され、力強い走行性能が求められるユーザーにも対応しました。トランスミッションは3速MTを採用し、四輪駆動システムと2速トランスファーケースにより、悪路走破性を高めました。

また、ブロンコの開発には、「ジープよりも快適で、ピックアップトラックよりも実用的なクルマを作る」という明確な目標がありました。そのため、サスペンションには当時のオフロード車では珍しかったコイルスプリング式を採用し、舗装路でも快適な乗り心地を確保しました。この設計は、オフロードビギナーからベテランドライバーまで幅広い層に支持される要因となりました。

特徴的なデザインとモデルバリエーション

初代ブロンコのデザインは、当時の他のオフロード車と一線を画すユニークなものでした。ボディ形状は短くコンパクトで、オフロード走行を前提としたクリアランスの高さが特徴的でした。シンプルで角張ったフォルムは、無駄を削ぎ落とした機能美を備え、視認性の高いフロントグリルや、頑丈なスチール製のボディパネルがタフな印象を与えていました。

ブロンコには、3つのボディスタイルが用意されていました。まずは、最も一般的な「ワゴンタイプ」で、ルーフが固定されているため全天候型として使いやすいモデルでした。次に、「ピックアップタイプ」は、荷台を備えたユーティリティ性の高いモデルで、農場や作業現場でも活躍しました。そして、「ロードスタータイプ」は、ドアが取り外し可能な仕様となっており、オープンエアの開放感を楽しめるモデルでした。

また、ブロンコはシンプルながらも頑丈なサスペンション設計を採用し、フロントにはコイルスプリングを用いたことで、快適な乗り心地と優れたオフロード性能を両立していました。これは当時のリーフスプリング主体のオフロード車と比べ、画期的な特徴のひとつでした。

現代に続くブロンコの人気と影響

初代ブロンコは、1977年までの約11年間にわたって生産され、累計20万台以上が販売されました。その後もモデルチェンジを繰り返しながら進化し、今日に至るまで根強い人気を誇っています。特に、クラシックカーファンやオフロード愛好家の間では、レストアやカスタムのベース車両として高い需要があります。

また、2021年に復活した新型ブロンコは、初代のデザインやコンセプトを継承しつつ、最新のテクノロジーを取り入れたことで、再び注目を集めることになりました。四輪駆動システムやオフロード専用のモード設定など、当時の思想を現代風に進化させた新型ブロンコは、オフロード市場において強い存在感を放っています。

初代ブロンコが与えた影響は、フォードのみならず、自動車業界全体に及んでいます。SUVがただの実用車ではなく、ライフスタイルの一部として認知されるようになったのも、ブロンコのようなモデルの登場がきっかけでした。特に、レジャーやアウトドアを楽しむための車としての価値観を根付かせた点は、現在のSUV人気にも大きく影響を与えています。

まとめ

フォード・ブロンコの初代モデルは、1966年のデビュー以来、オフロード性能と実用性を兼ね備えた革新的なSUVとして、多くの人々の心をつかんできました。コンパクトなボディと高い機動性を持ちながら、快適な乗り心地も実現し、日常使いからオフロードまで幅広いシーンで活躍しました。

そのデザインや機能は、後のSUV市場に大きな影響を与え、今日に至るまで多くのファンに愛され続けています。そして、新型ブロンコの登場により、初代モデルが築いた伝統が現代にも受け継がれていることが証明されました。

初代ブロンコは、単なる一台の車にとどまらず、アメリカンSUVの歴史を語る上で欠かせない存在です。今なお多くの人々がその魅力に惹かれ続け、レストアやカスタムを通じて新たな命を吹き込んでいます。クラシックカーの価値が見直される今こそ、改めて初代ブロンコの魅力を再確認する絶好の機会かもしれません。