ワールド・カー・ジャーニー

世界中のクルマに出会える旅へ

ダイハツ・ミラジーノ:可愛いだけじゃない、本気で作り込まれた1台

ダイハツ・ミラジーノ(初代・L700S/ミラジーノ ターボ)諸元データ

・販売時期:1999年3月〜2004年11月
・全長×全幅×全高:3395mm × 1475mm × 1425mm
ホイールベース:2360mm
・車両重量:800kg(ターボ車)
・ボディタイプ:5ドアハッチバック
・駆動方式:FF(フルタイム4WDもあり)
・エンジン型式:EF-DET
・排気量:659cc
・最高出力:64ps(47kW)/6400rpm
・最大トルク:10.8kgm(106Nm)/3600rpm
トランスミッション:4速AT / 5速MT
・サスペンション:前:マクファーソンストラット / 後:トーションビーム
・ブレーキ:前:ディスク / 後:ドラム
・タイヤサイズ:155/65R13
・最高速度:非公開(実測100〜130km/h前後)
・燃料タンク:40L
・燃費(10・15モード):約18.4〜21.0km/L
・価格:108万円〜136万円(当時の税込価格)
・特徴:
 - 丸目2灯のクラシックデザイン
 - 上質な内装とウッド調インパネ
 - ターボモデルのスポーティな走り

 

1999年、当時の軽自動車界に突如現れた“おしゃれ番長”といえば、ダイハツ・ミラジーノ。ベースはごく普通の5ドア軽自動車「ミラ」なのに、外観はどこか英国風で、まるでミニクーパーを彷彿とさせるデザイン。丸目2灯のヘッドライトに、クロームメッキのグリルとバンパー。今見てもそのたたずまいは愛らしく、レトロモダンの先駆けとも言える存在でした。

1990年代後半、若者を中心に“クラシックで可愛い”デザインがブームとなる中、ミラジーノはそのニーズにぴったりハマった車でした。しかもただのファッションカーではなく、ターボ付きのグレードも用意され、走りもなかなか侮れません。ウッド調パネルや本革風シートをあしらった内装は、当時の軽自動車としてはかなり凝った作りで、女性だけでなく、クルマ好きな男性からも「セカンドカーにいいかも」と高評価を受けていました。

20年以上経った今でも中古市場で高値安定。再び脚光を浴びる“ネオクラシック軽”として、ミラジーノは再評価の波に乗っています。今回は、そんな初代ミラジーノの誕生背景から現代での人気の理由まで、その魅力をじっくりと掘り下げていきましょう。

 

なぜクラシック顔? ミラジーノ誕生の裏にあった“レトロブーム”と差別化戦略

1999年、軽自動車は“ハイトワゴン戦争”の真っ只中にありました。スズキ・ワゴンRが席巻するなか、各メーカーはこぞって背の高い軽自動車を開発。そんな中、あえて低く、丸く、クラシックな顔で登場したのがミラジーノでした。ベースはごく普通の5ドアハッチバック「ミラ」なのに、なぜこんな異端児が生まれたのでしょう?

背景には、1990年代後半に起きた「ネオクラシックカーブーム」があります。日産のフィガロやパオ、マーチ ボレロなど、クラシカルで個性的なスタイルが注目を集めていた時代。街にはベスパやローバーミニが溢れ、ファッションもレトロに回帰していました。そんな時代の空気に乗るように、ダイハツはミラのプラットフォームを活かしながらも、あえて“逆張り”とも言える方向に舵を切ったのです。

とはいえ、ただ見た目がクラシックなだけで売れるほど甘くはありません。ダイハツは細部にもこだわりを詰め込みました。たとえば、ヘッドライトには丸型マルチリフレクターを採用し、グリルにはクロームメッキがキラリと光る。また、リアもクラシカルな縦長テールランプを採用し、全体で一貫した世界観を演出。これにより、「ミニっぽいけどミニではない」「実用的だけど洒落てる」という絶妙な立ち位置を獲得することに成功したのです。

ミラジーノの登場は、「軽自動車=実用一辺倒」というイメージを壊し、「見た目で選ぶ楽しさ」を軽にもたらした出来事でした。レトロ感とモダンな実用性を両立したことで、ファッション感度の高いユーザー層に刺さり、一気に人気車種となったのです。

 

“軽”なのに本気の造り? ミラジーノのインテリアとディテールへのこだわり

初代ミラジーノは、その外観のクラシックな魅力だけで語られることが多いですが、実は“内側”にも驚くほどのこだわりが詰まっていました。軽自動車とは思えない上質感、それがミラジーノがただのファッションカーにとどまらなかった理由のひとつです。

ドアを開けてまず目に飛び込んでくるのは、ウッド調のパネルが配されたインパネデザイン。しかも、ただの飾りではなく、エアコン吹き出し口やメーター周りにもクラシカルな造形が施されており、細部まで統一された“雰囲気作り”が徹底されています。ステアリングホイールはグレードによっては本革巻きで、メッキ調のドアハンドルやシートのパイピングもぬかりなし。軽でここまでやるか…と、思わず唸ってしまう作り込みです。

また、シートにも注目したいポイントがあります。標準仕様の布シートでも座面が広く、意外にも乗り心地が良好。上級グレードになると、ベロア調や本革風の素材を使ったものも登場し、小さな車ながら“贅沢な気分”を味わえる空間に仕上がっていました。この上質さは、同時期の他メーカー軽自動車とは一線を画しており、所有すること自体がちょっとしたステータスになる、そんな雰囲気がありました。

軽自動車としての実用性も確保されており、後部座席はそれなりに広く、5ドアなので使い勝手も良好。つまり、**ミラジーノは「見た目重視の軽」ではなく、「実用性と遊び心が共存する軽」**だったのです。このバランス感覚が、多くのユーザーの心を掴んだのは間違いありません。

 

いま乗ってもオシャレ? 現代での評価とネオクラシックとしての再注目

初代ミラジーノが登場してから、すでに20年以上。普通ならすっかり“旧車”扱いされてもおかしくない時期ですが、この車は今でも中古車市場で高い人気を誇っています。街で見かけても古さを感じさせないどころか、「あれ、かわいい!」と注目を浴びる存在に。なぜここまで時を経ても色あせないのでしょうか?

その答えの一つが、やはり“普遍的なデザイン”。クラシックなデザインというのは流行に左右されにくく、時代が変わっても魅力が失われません。ミニやフィアット500のように、丸目ライトとシンプルなフォルムは、どの時代でも「かわいい」「品がある」と評価され続けます。しかもミラジーノはそのスタイルを軽自動車というコンパクトなパッケージで実現しているから、日常の足としても使いやすい。つまり、見た目も良くて実用性も高いという“今っぽいニーズ”にすらマッチしてしまうのです。

さらに、ミラジーノは現在、**「ネオクラシック軽」**というジャンルの先駆けとして、若い世代からも注目を集めています。SNSでは「ジーノ乗りさんと繋がりたい」なんてタグも見られ、愛車として大切にしているオーナーがたくさん。DIYで内装をリメイクしたり、英国風ナンバープレートを付けてカスタムしたりと、その“伸びしろ”のある個性も支持される理由のひとつです。

燃費や安全性能だけを見れば、もちろん最新の軽には敵いません。でも、「愛着を持てる車」「持っていて楽しい車」として、ミラジーノはいまだに魅力的な1台。流行に流されない自分だけのスタイルを求める人にとって、これほどぴったりの車はそう多くありません。

 

まとめ

初代ダイハツ・ミラジーノは、ただの“見た目が可愛い軽”ではありませんでした。その背景には90年代のレトロブームと、軽自動車の中で際立つ存在を作ろうという明確な戦略がありました。結果として生まれたのは、クラシカルなデザインと実用性を両立した、どこか英国車のような雰囲気を漂わせる個性派モデルでした。

内装においても、軽自動車の枠を超えたこだわりが詰まっていました。ウッド調パネルや本革風のパーツ、上質なシートの手触り。単なる移動手段ではなく、“所有する楽しさ”を提供してくれる作りは、今見ても感心させられます。そして何より、今なお中古車市場で高い評価を受け、カスタムやSNS映えといった新たな楽しみ方が生まれている点も見逃せません。

20年以上経っても古びることなく、多くの人の心を掴み続けるミラジーノ。その存在は、クルマが単なる道具ではなく、ライフスタイルの一部であることを思い出させてくれます。気取らず、だけどちょっとお洒落で、見た目にもこだわりたい――そんな気持ちに応えてくれる“軽のミニ”、それが初代ミラジーノなのです。