諸元データ
基本情報
エンジン
- エンジン型式:直列4気筒 OHV / DOHC
- 排気量:1.2L~1.6L
- 最高出力:60PS~110PS(グレードによる)
- 最大トルク:8.8kgf·m~13.0kgf·m
- 燃料供給方式:キャブレター
- 燃料種類:ガソリン
トランスミッション
- 変速機:4速MT / 5速MT(スポーツモデル) / 3速AT
車体寸法
- 全長:4,030mm
- 全幅:1,610mm
- 全高:1,400mm
- ホイールベース:2,425mm
- 車両重量:900kg~1,000kg(モデルによる)
足回り
- サスペンション(前):ダブルウィッシュボーン
- サスペンション(後):リジッドアクスル+コイルスプリング
- ブレーキ(前/後):ディスク / ディスク(4輪ディスクブレーキ標準)
- タイヤサイズ:155SR13
燃費性能
- 燃費:約10~15km/L(グレード・走行環境により変動)
価格(当時)
- 新車価格:約100万~150万円(市場・グレードにより変動)
- 開発コード「124」がそのまま車名として採用された最初のモデル。
- 1967年の「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」受賞に輝いた名車。
- シンプルで高信頼性のエンジンと優れた実用性を備えた設計。
- 当時としては先進的な4輪ディスクブレーキを標準装備し、安全性を向上。
- セダン、ワゴン、クーペ、スパイダーと幅広いバリエーションを展開。
- ソ連でライセンス生産され「ラーダ・2101」として世界的な成功を収めた。
1966年に登場したフィアット・124は、イタリアの自動車メーカー、フィアットが生み出したミドルクラスのセダンです。優れた実用性とシンプルながら洗練されたデザイン、そして信頼性の高いメカニズムを兼ね備えたこの車は、ヨーロッパだけでなく世界中で人気を博しました。その実力が認められ、1967年には「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、高い評価を受けたモデルでもあります。
フィアット・124の成功の要因は、その多様性にもありました。セダン、ワゴン、スポーツクーペ、スパイダーといったさまざまなボディバリエーションが展開され、幅広いニーズに対応しました。特に、スポーツバージョンである「124スパイダー」は、後にアバルトによるチューニングモデルも登場し、スポーツカー市場でも高い評価を得ました。
また、フィアット・124は開発コードがそのまま車名として使用された最初のモデルでもあります。通常、開発コードは製品化される際に異なる名称に変更されることが多いのですが、124はそのまま正式名称となり、その後のフィアットの車名の命名スタイルにも影響を与えました。
本記事では、フィアット・124の「エンジンと走行性能」「デザインと実用性」「世界市場での成功と影響」の3つの視点から、その魅力を詳しく解説していきます。
1. シンプルながら優れたエンジンと走行性能
フィアット・124の魅力のひとつは、そのシンプルで信頼性の高いエンジンにあります。ベースモデルには、直列4気筒OHVエンジンが搭載され、排気量は1.2Lから1.6Lまでバリエーションが用意されていました。これにより、日常の街乗りからロングドライブまで幅広く対応できるパワートレインを実現しました。
また、フィアット・124の足回りは、当時の小型セダンとしては非常に先進的な設計が施されていました。前輪にはダブルウィッシュボーンサスペンションを採用し、後輪にはリジッドアクスルを組み合わせることで、しなやかな乗り心地と安定した走行性能を両立。軽快なハンドリングとしっかりとした接地感により、ドライバーは安心して運転することができました。
さらに、フィアット・124の魅力は、単なるセダンにとどまらず、スポーツモデルにも展開されたことです。124スパイダーには、より高性能なDOHCエンジンが搭載され、スポーツカーとしての資質を持つ一台へと進化しました。これにより、フィアット・124は実用車でありながら、ドライビングの楽しさを追求するモデルとしても高い評価を得たのです。
さらに特筆すべきは、当時としては珍しく4輪ディスクブレーキが標準装備されたことです。通常、この時代のミドルクラスセダンはフロントのみディスクブレーキを採用することが一般的でしたが、フィアット・124は4輪全てにディスクブレーキを搭載し、制動性能の向上を図りました。これにより、安全性が大幅に向上し、スポーツ走行にも適したモデルとなりました。
2. 実用性とスタイリッシュなデザイン
フィアット・124は、シンプルながら機能美を備えたデザインが特徴です。イタリア車らしいエレガントなスタイリングに加え、広々としたキャビン、使い勝手の良いトランクスペースを確保し、実用性にも優れていました。
デザインを手掛けたのは、フィアット社内のデザインチームで、無駄を省いたクリーンなラインと、バランスの取れたプロポーションが魅力です。特に、丸型のヘッドライトとシンプルなフロントグリルの組み合わせは、親しみやすくも洗練された印象を与えました。
内装も、当時の標準的なセダンと比べて快適性を意識した作りとなっており、シートの作りやダッシュボードのデザインは機能的でありながら質感の高いものでした。また、ワゴンモデルでは荷室スペースが広く、ファミリーカーや商業用途にも対応できる多目的な車としての魅力を備えていました。
3. 世界市場での成功と影響
フィアット・124はイタリア国内だけでなく、世界中で販売され、大きな成功を収めました。その影響力の大きさを示すのが、ライセンス生産されたモデルの多さです。特に有名なのが、旧ソ連でライセンス生産された「ラーダ・2101(ジグリ)」です。
ソビエト連邦では、フィアット・124の設計をベースにしたラーダ・2101が大量生産され、東欧市場の自動車産業に多大な影響を与えました。ラーダ・2101はフィアット・124の基本設計を踏襲しつつも、ロシアの厳しい環境に適応するために耐久性を向上させた仕様が特徴です。結果として、ラーダ・2101は数百万台以上が生産され、フィアット・124の遺産を受け継ぐ形となりました。
まとめ:時代を超えて愛されるフィアット・124
フィアット・124は、シンプルで信頼性の高い設計、高い実用性、そして美しいデザインを兼ね備えた車として、多くの人々に愛され続けました。ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するほどの完成度を持ち、世界各国で生産・販売されたことで、その影響は計り知れません。
また、4輪ディスクブレーキの採用や、開発コードがそのまま車名として使用されるなど、革新的な試みも随所に見られました。こうした特徴により、フィアット・124は今でもクラシックカー愛好家の間で高く評価されています。
このイタリアの名車は、時代を超えて語り継がれる存在として、今も多くの人々に愛され続けています。