三菱・ピスタチオ 諸元データ
・販売時期:1999年12月22日~2000年3月31日
・全長×全幅×全高:3440mm × 1475mm × 1510mm
・ホイールベース:2340mm
・車両重量:700kg
・ボディタイプ:3ドアハッチバック
・駆動方式:FF(前輪駆動)
・エンジン型式:4A31型 直列4気筒DOHC16バルブ GDI
・排気量:1094cc(1.1L)
・最高出力:74ps(54kW)/回転数不明
・最大トルク:10.2kgm(100Nm)/回転数不明
・トランスミッション:5速MT
・サスペンション:不明
・ブレーキ:不明
・タイヤサイズ:135/80R13(70S)
・最高速度:不明
・燃料タンク:不明
・燃費(10・15モード):約30.0km/L
・価格:95万9000円(消費税別、1999年当時)
・特徴:
・世界最小となる1.1L直噴GDIエンジン搭載
・自治体・法人限定、わずか50台の超希少販売
・アイドリングストップシステムで純ガソリン車世界一の低燃費達成
みなさん、こんにちは!
今日ご紹介するのは、三菱が1999年にたった50台だけ作った、超激レアな一台です。
その名も「ピスタチオ」!
お菓子売り場でおなじみのあのナッツと同じ名前を持つ、緑と黄色のツートンカラーがなんともかわいらしい軽自動車ベースのハッチバックです。
この車、ある意味超レアな車です!
なにしろ一般のお客さんには売られておらず、自治体や電力会社のような公益企業だけに限定販売された、いわば「非売品に近い量産車」だったからです。
でも、知る人ぞ知るこの一台には、実はとんでもない技術が詰め込まれていました。
当時世界最小だった1.1リッターの直噴エンジンや、渋滞の多い日本にぴったりのアイドリングストップシステムなど、今の車にもつながる先進技術のタネがぎっしり詰まっているんです。
たった50台、しかも実際に走っていたのは40台ほどだったとも言われているこの車が、なぜ作られ、そして何を三菱に残したのか。
今回はそんなピスタチオの魅力を、じっくりと掘り下げていきたいと思います。
読み終わるころには、きっとあなたも「そんな車があったのか」と誰かに話したくなっているはずです。
それではさっそく、ピスタチオの世界をのぞいていきましょう。
世界最小の直噴エンジンが生んだ「実験車」というポジション
ピスタチオという車を理解するうえで、まず知っておきたいのが「GDIエンジン」というエンジンです。
GDIとは、ガソリンをエンジンの燃焼室に直接噴射する仕組みのこと。
ディーゼルエンジンではよく使われていたのですが、当時ガソリンエンジンで安定して燃やすのはとても難しいとされていました。
三菱はこの難題に真正面から取り組み、1996年に発売したセダン「ギャラン」で、量産車として世界で初めてGDIエンジンの実用化にこぎつけました。
これは自動車業界にとって、かなり大きなニュースでした。
その成功に勢いづいた三菱は、GDI技術をさらに小さなエンジンにも応用できないかと考えます。
そして1999年、1.1リットルという当時世界最小クラスの排気量でGDIエンジンを完成させました。
そしてそれを搭載する実験の場として選ばれたのが、このピスタチオだったのです。
大きなエンジンで直噴を成功させるのと、小さなエンジンで同じことをやるのとでは、難しさの種類がまったく違います。
エンジンの世界でも、排気量が小さくなるほど燃焼室はコンパクトになり、燃料噴射のコントロールはよりシビアになっていきます。
三菱のエンジニアたちは、そのシビアな条件のなかで74馬力というしっかりとしたパワーを引き出し、なおかつ圧倒的な低燃費まで両立させてみせました。
つまりピスタチオは、単なる「小さくてかわいいエコカー」ではなく、三菱が持つ低コストかつ低燃費なエンジン制御技術を実証するための、いわばスタディモデルだったわけです。
量産して大々的に売るというよりも、まずは技術的に成立するかどうかを確かめる。
そのための実験車としての性格が強かったからこそ、生産台数もわずか50台という、驚くほど少ない数にとどめられたのでしょう。
こうした経緯を知ると、ピスタチオという名前の裏にある三菱の本気度が、少し違って見えてくるのではないでしょうか。
50台限定、なぜ一般ユーザーは買えなかったのか
ピスタチオのもうひとつの大きな特徴は、なんといってもその販売方法の特殊さです。
普通、新しい車が発売されるとなれば、ディーラーに行けば誰でも注文できるのが当たり前ですよね。
しかしピスタチオに関しては、そうはいきませんでした。
購入できたのは、積極的に環境保全へ取り組んでいる自治体や、電力会社のような公益企業などの法人だけ。
一般のユーザーがお金を払って買いたいと思っても、手に入れることができない車だったのです。
生産台数も50台という少なさで、これは2022年時点でも三菱車として歴代最少という記録になっています。
しかも、実際に生産・販売されたのは40台程度だったとも言われていて、公式の予定数すら埋まりきらなかった可能性があるのです。
なぜここまで販売を絞り込んだのでしょうか?
考えられるのは、ピスタチオがあくまで「技術のショーケース」としての役割を担っていたということです。
新しい技術を大量生産のラインに乗せる前に、まずは限られた台数で実際に走らせてみて、耐久性や使い勝手を確認する。
自治体や公益企業という、環境意識の高い法人に使ってもらうことで、日々の実用の中でデータを集めながら、企業イメージのアピールにもつなげる。
いわば、広告塔と実験台を兼ねたような存在だったと考えると、限定的な販売方法にも納得がいきます。
価格自体は95万9000円と、発売された1999年当時では決して高すぎるものではありませんでした。
にもかかわらず、一般の人が手を出せなかったというところに、この車の特殊な立ち位置が表れています。
軽自動車の皮を被った低燃費モンスター
ピスタチオのベースになっているのは、当時人気を集めていた軽自動車「ミニカ」の3ドアハッチバックです。
ただし、ミニカをそのまま使ったわけではなく、随所に手が加えられています。
まず目を引くのがボディサイズです。
専用デザインのバンパーを装着したことで、全長はミニカから45mm伸びて3440mmになりました。
一方で全幅は1475mmのままとされ、軽自動車の規格ぎりぎりのラインを保っています。
イメージとしては、同じ体型の人が少し大きめのジャケットを羽織って、シルエットだけをスマートに見せているような感じでしょうか。
中身はしっかり手を入れつつ、外見の印象はコンパクトさを崩さない、絶妙なバランス感覚です。
そして何より驚くのが車両重量です。
ボディが大きくなり、より高性能なエンジンを積んだにもかかわらず、車重はわずか700kgに抑えられています。
これはミニカの中堅グレードと比べても、むしろ軽いくらいの数値です。
軽さは燃費の大敵である「重さ」を減らすという意味で、非常に理にかなった作り込みと言えます。
さらに見逃せないのが、アイドリングストップシステム「ASG」の存在です。
信号待ちなどでブレーキを踏んで停車し、シフトをニュートラルに入れてクラッチペダルから足を離すと、自動的にエンジンが止まる仕組みになっています。
再始動もクラッチを踏むだけであっという間に終わるので、発進のもたつきもほとんど感じさせません。
日本の道路は信号や渋滞が多く、車が停止している時間も意外と長いものです。
その停止時間中、エンジンをこまめに止めてしまおうというのが、このシステムの狙いでした。
小排気量で燃費のいいGDIエンジン、軽量なボディ、そしてアイドリングストップという三つの武器が組み合わさった結果、10・15モードで30.0km/Lという、当時の純ガソリン車としては世界一の低燃費を達成しています。
軽自動車然とした見た目からは想像しにくいかもしれませんが、中身は当時の技術を惜しみなく投入した、まさに低燃費モンスターだったのです。
まとめ
ここまで、三菱ピスタチオという一台を、開発の背景から希少性、そして技術的な工夫まで見てきました。
世界初のGDIエンジンを実用化した三菱が、その技術をさらに小さなエンジンへと応用するために作り上げた実験車。
それがピスタチオだったというわけです。
自治体や公益企業のみを対象にした限定販売という珍しい売り方も、この車がただの商品ではなく、技術を試すためのショーケースだったことを物語っています。
ミニカをベースにしながらも、軽量なボディとアイドリングストップシステムを組み合わせ、当時世界一の低燃費を実現してしまったその実力は、今振り返ってもあっぱれのひと言です。
派手さやスピードとは無縁の車ですが、こういう地道な挑戦の積み重ねが、後のハイブリッド車やアイドリングストップが当たり前になった今の車社会につながっているのだと思うと、なんだか感慨深いものがありますね。
たった50台、しかも現存数もはっきりしないという、まさに幻の存在。
もしどこかの旧車イベントや博物館でピスタチオに出会うことがあったら、ぜひこの記事を思い出しながら、じっくり眺めてみてください。
きっと、緑と黄色のかわいらしい見た目の奥に隠れた、三菱の本気を感じ取れるはずです。
小さな車体に大きな挑戦を詰め込んだピスタチオ、これからも自動車史の隅っこで、ひっそりと語り継がれていってほしい一台です。