フータン グランドアルバイシン ヘリテージ カブリオレ 2.0L 諸元データ
・販売時期:2023年1月~販売中
・全長×全幅×全高:4205mm × 1820mm × 1225mm
・ホイールベース:2310mm(ベース車両マツダMX-5に準ずる)
・車両重量:990kg
・ボディタイプ:2シーターオープンカー(カブリオレ)
・駆動方式:FR(後輪駆動)
・エンジン型式:DOHC直列4気筒 SkyActiv-G(マツダ製)
・排気量:1998cc
・最高出力:184PS(135kW)/ 7000rpm
・最大トルク:20.9kgm(205Nm)/ 4000rpm
・トランスミッション:6速MT(2.0Lタルガには6速ATも設定)
・サスペンション:前:ダブルウィッシュボーン / 後:マルチリンク
・ブレーキ:前:ベンチレーテッドディスク / 後:ソリッドディスク
・タイヤサイズ:205/45R17
・最高速度:219km/h
・燃料タンク:45L
・燃費:非公表
・価格:910万円(税込)~1,262万円(税込)
・特徴:・マツダMX-5をベースにスペインの職人がハンドメイドで架装した2シーターオープンカー
・クラシックな「ヘリテージ」とスポーティな「ビスポーク」の2スタイルを設定
・カラー・レザー・内装素材をフルオーダーメイドで仕立て可能
世の中には、「知る人ぞ知る」という言葉がよく似合うクルマがあります。
今回ご紹介するそんな1台は街なかで走っているのを見かけることはまずありません。
でも、一度目にした人は思わず二度見してしまう。
そんな独特の存在感を放つクルマが、今回ご紹介するフータン・グランドアルバイシンです。
スペイン南部、グラナダ近郊の小さな街サンタフェに、世界でもほとんど知られていない自動車メーカーがひっそりと工場を構えています。
その名もフータン・オートモービルズ(HURTAN Automobiles)。
1991年に設立された、少数精鋭のコーチビルダーです。
「コーチビルダー」という言葉、少し聞き慣れないかもしれませんが、簡単に言えば、既存の自動車のメカニズムや骨格をそのまま活かしながら、ボディや内装をゼロから作り直してしまう職人集団のことです。
洋服で例えるなら、既製品のスーツの生地や縫製をすべてほどき、まったく別の形に仕立て直すオーダーメイド職人のようなものです。
それをクルマでやってしまうのが、コーチビルダーなのです。
このフータンが手がけるグランドアルバイシンのベース車両は、実は日本でもおなじみのマツダ・ロードスター(海外名:MX-5)です。
「あのロードスターが?」と驚かれる方も多いかもしれませんが、実はそうなのです。
オープンカーは衝突安全性から剛性が必要で、なかなかうまく作る事が難しい中、既存のロードスターをカスタマイズしてしまえば元々の骨格をそのまま使いこなせるという風です。
ちなみに、日本の企業、光岡のヒミコも同様にロードスターをベースにしています。
「グランドアルバイシン」という名前は、スペイン・グラナダの世界遺産にも登録されている歴史的なムーア人街区「アルバイシン地区(Albaicín)」に由来しています。
アルハンブラ宮殿の対岸に広がるこの古い街並みは、石畳の路地と白壁が美しく、スペインの歴史と文化が息づく場所です。
そんな場所の名を冠したクルマが、ただの量産車であるはずはありません。
フータン・グランドアルバイシンは、単なる「改造車」ではありません。
スペインの伝統的な職人技術と現代の最先端テクノロジーが融合した、世界でも数台しか存在しない特別な1台です。
お値段910万円から。
その数字を見て驚かれる方もいると思いますが、そこに込められた物語と価値は、普通の高級車では到底味わえないものがあります。
今回は、そんなフータン・グランドアルバイシンの魅力を、3つの視点から深掘りしていきたいと思います。
1980年代の工房から生まれた夢 ― 創業者フアン・ウルタードの情熱と創業ストーリー
1980年代のスペイン。 まだフータンというブランドは存在せず、若きフアン・ウルタードは、ひとつの工房で働きながら、頭の中でずっとある夢を温め続けていました。
「いつか、自分が理想とするクルマを自分の手で作ってみたい。」 その思いだけを胸に、毎日を過ごしていたのです。
夢の源泉となったのは、1950年代から60年代にかけて生み出されたクラシックカーへの深い愛情でした。
流れるようなボディライン、丁寧に仕上げられた内装、そして人の手でひとつひとつ作られていく製造のプロセス。
そういった「古き良きクルマ」の美しさと哲学に心を奪われたフアンは、当時からさまざまな展示会やイベントに自作のクルマを持ち込んでは、少しずつ自分のビジョンを形にしていきました。
夢は少しずつ、着実に近づいていたのです。
その積み重ねが実を結び、1991年、スペイン・アンダルシア地方の小都市サンタフェにフータン・オートモービルズが誕生します。
サンタフェは、アルハンブラ宮殿で知られるグラナダからわずか数キロの場所に位置する、歴史と文化に彩られた土地です。
このスペイン南部の地に根を下ろしたことが、フータンというブランドのDNAに深く刻み込まれているのは間違いないでしょう。
ブランド最初のモデルは「フータンT2」でした。 イギリス車を思わせる個性を持つスポーティな2シーターで、60馬力から172馬力までのエンジンを搭載したこのモデルは、後のフータンのアイコン的な存在となりました。
「クラシックなスタイルと現代の技術の融合」という哲学は、このT2の時代からすでに確立されていたのです。
フアン・ウルタードが追い求めたのは、単に「古いクルマを作る」ことではありませんでした。
1950〜60年代のクラシックカーが持っていた美しさや個性を現代に蘇らせながら、乗り心地の快適さや走行性能はしっかりと現代の水準を満たす、そういった「過去と未来をつなぐ1台」を作ることが目標だったのです。
料理で例えるなら、祖母から受け継いだレシピを忠実に守りながら、道具と技術だけは最新のものを使う料理人のようなイメージ。
懐かしさと革新が、ひとつの皿の上に共存しているのです。
フータンの工房では今も、熟練した職人が1台1台を手作業で丁寧に仕上げています。
大量生産のラインを流れるクルマとはまったく異なる、まるで宝石を磨くような製造プロセスです。
創業から30年以上が経った今も、フアン・ウルタードの夢は、サンタフェの工房で脈々と受け継がれています。
マツダ・ロードスターという「骨格」に、スペインが魂を吹き込んだとき
フータン・グランドアルバイシンを語る上で、絶対に外せないのがベース車両との関係です。 このクルマの骨格となっているのは、日本が世界に誇る2シーターオープンスポーツカー、マツダMX-5(日本名:ロードスター)です。 しかも、ただのロードスターじゃありません。
日本仕様のロードスターには1.5リッターエンジンしか搭載されていませんが、フータンが使用するのはスペイン仕様のMX-5です。
スペイン仕様には最高出力184馬力の2リッターエンジンが搭載されており、日本仕様とは一味違うパワーを持っています。
最高速度は219km/hというから、本格的なスポーツカーとしての実力も十分です。
さて、ここからがフータンの職人技の見せどころです。
このMX-5を受け取った職人たちは、まずボディをすべて作り直します。
全長は元の車体より29cm延長され、全幅は5.5cm拡大され、全高は逆に1cm低くなります。
もともとのロードスターの面影はほぼ消え去り、どこを見てもクラシックカーとしか思えない、まったく別物のシルエットが現れるのです。
「でも重くなるのでは?」と思われる方もいるでしょう。
実は、車重は元のMX-5とまったく同じ990kgに抑えられているのです。
普通の乗用車が1300〜1500kgあることを考えると、これはかなり驚くべき軽さです。
ボディをここまで大胆に作り変えながらも同じ重量を維持できるのは、職人たちの素材選びと技術の賜物と言えます。
日本生まれのロードスターが、スペインの職人の手を経て、まったく別の顔を持つ1台に変わっていく。
このストーリー自体が、ひとつの映画のような物語ではないでしょうか。
日本の自動車メーカーが誇る信頼性の高いメカニズムと、スペインの伝統的なコーチビルディングの技術が出会うことで生まれた、まさに「日欧合作」のスポーツカーと言えるでしょう。
「世界に1台だけ」の哲学 ― ヘリテージとビスポーク、二つの個性と日本上陸
フータン・グランドアルバイシンには、大きく分けて2つのスタイルがあります。
クラシックで上品な雰囲気の「ヘリテージ」と、より大胆でスポーティな雰囲気の「ビスポーク」、さらにそれぞれに屋根の開き方が異なる「カブリオレ(ソフトトップ)」と「タルガ(屋根が脱着できるタイプ)」の2タイプが用意されています。
つまり、4つの組み合わせが存在することになります。
ヘリテージは、往年のクラシックカーからインスピレーションを得てデザインされたモデルです。
フロントグリルや前後バンパー、ドアハンドル、ミラーキャップなど随所にクロームパーツが使われ、クラシックな17インチスポーク調ホイールが装着されます。
インテリアにはウッドパネルがあしらわれ、目を閉じれば1950〜60年代のヨーロッパの街を走っているかのような気分に浸れるモデルで、「往年の名車の雰囲気を現代で味わいたい」という方にとって、これ以上ない選択肢です。
一方のビスポークは、同じグランドアルバイシンとは思えないほど、ガラリと雰囲気が変わってきます。
ボディ全体を走る特徴的なラインと、異彩を放つメッシュグリル、そして17インチの星形ホイール。
アルミやカーボン素材をふんだんに使ったインテリアは、スポーツカーらしいアグレッシブな雰囲気に満ちています。
「ネオクラシック」という言葉がよく似合う、唯一無二のスタイルです。
そしてグランドアルバイシン最大の魅力は、これらすべてがフルオーダーメイドであるという点です。
ボディカラーはもちろん、シートのレザー素材、縫製の色、パイピングのデザイン、ステアリングホイールに至るまで、あらゆる部分を自分好みにカスタマイズ可能です。
つまり、同じフータン・グランドアルバイシンが2台並ぶことは、理論上ありえません。
完全に「世界に1台だけ」の、自分専用カーが手に入るのです。
この哲学を持つフータンが日本に初上陸したのは、2023年2月のことでした。
日本正規輸入販売代理店のフータンジャパンが、大阪市西区にショールームをオープンし、グランドアルバイシンのオーダー受付を開始しました。
つまり、日本で購入して乗る事が可能という事です!
量産品ではなく、唯一無二の存在感を放つクルマが、日本の中でもひときわ個性的な都市・大阪から全国へと広がっていこうとしているのです。
まとめ
フータン・グランドアルバイシン。
今回この名前を初めて知ったという方も、きっと多いのではないでしょうか。
でも、この記事を読んでくださったあなたには、もうこのクルマが持つ唯一無二の魅力を十分に感じていただけたのではないかと思っています。
1980年代にひとりの若者がスペインの工房で温めた夢は、1991年にフータン・オートモービルズという形で花を咲かせました。
そして30年以上の時を経て、日本が誇るマツダ・ロードスターをベースに生まれたグランドアルバイシンは、2023年に日本の地へと上陸しました。
まるでひとつの長い旅の物語のようです。
価格は910万円(税込)から。
高い!と感じる方が大半かもしれません。
でも、910万円からならスーパーカーのようにとても届かない金額ではないですし、この車の持つ価値は、スペックや価格の数字だけでは語り切れません。
世界に1台しか存在しない自分だけの1台、熟練した職人がハンドメイドで丁寧に仕上げた1台、スペインの情熱と日本の技術が出会って生まれた1台。
そういった物語のすべてが、フータン・グランドアルバイシンという名前には込められているのです。
これからの時代、クルマの電動化や自動化がどんどん進んでいきます。
大量生産・大量消費の流れの中で、フータンのような少数精鋭のコーチビルダーが作るクルマの存在は、むしろその希少性と価値を増していくのかもしれません。
機械ではなく人の手で、1台ずつ丁寧に作られる。 そんな「クルマ作りへの誠実さ」が、グランドアルバイシンのすべてに宿っています。
「世界に1台だけの自分のクルマ」という夢。
それを本当に実現できるクルマが、今この地球上に存在しているのです。
あなたも一度、スペインのサンタフェから届いたこの情熱を、ぜひ感じてみてください。
