
BYD・元 PLUS 諸元データ
・販売時期:2021年~現在
・全長×全幅×全高:4455mm × 1875mm × 1615mm
・ホイールベース:2720mm
・車両重量:1750~1850kg(仕様により異なる)
・ボディタイプ:5ドアSUV
・駆動方式:FF(EV) / 4WD(DM-i)
・パワートレイン:
- EVモデル:モーター最大150kW(204ps)、航続最大510km(CLTC)
- PHEVモデル(元PLUS DM-i):1.5Lエンジン+電気モーター
・トランスミッション:電気式CVT(DM-i) / シングルスピード(EV)
・サスペンション:前:マクファーソンストラット / 後:マルチリンク
・ブレーキ:前後ディスク
・タイヤサイズ:215/55R18
・最高速度:160km/h(EV)
・燃費(DM-i):WLTC換算で20km/L超相当
・価格:中国国内で約13万〜17万元(日本円換算で約250万〜330万円)
・特徴:
- eプラットフォーム3.0を採用し、効率と安全性を強化
- インテリアにはBYD名物の大型回転式ディスプレイを搭載
- グローバル展開を見据え、欧州・東南アジアでも販売
2021年に登場した「BYD・元 PLUS」は、それまで中国国内で販売されてきた「元」シリーズの中でも特別な意味を持つモデルでした。初代と2代目でSUV市場に足場を築き、Proでデザインと技術を洗練させたBYDは、このPLUSによってついにグローバル市場を本格的に視野に入れたのです。単なる改良版ではなく、新世代プラットフォーム「eプラットフォーム3.0」を採用した最初の量産SUVであり、同社の技術力と未来志向を象徴する存在となりました。
「元 PLUS」が登場した背景には、中国市場の成熟と国際市場への拡大という二つの流れがありました。中国国内ではEVやPHEVの普及が加速し、消費者が次に求めるものは「走行距離の長さ」や「内装の質感」、そして「ブランドとしての安心感」でした。一方でBYDは、国内で得た成功を足掛かりに、東南アジアや欧州など世界市場へ挑戦する準備を整えていました。その両方のニーズを満たすために開発されたのが、この「元 PLUS」だったのです。
デザイン面では、Proで採用された「Dragon Face 2.0」をさらに発展させ、ワイド感と低重心を意識したプロポーションを実現しました。SUVでありながらクーペのような流麗さを感じさせるボディラインは、従来の「実用SUV」の枠を超え、「スタイリッシュなライフスタイルカー」として訴求力を高めました。インテリアではBYDの代名詞とも言える大型の回転式ディスプレイを中心に据え、デジタル化と高級感を両立。都市部の若いユーザーから家族層まで幅広く響く仕上がりになっています。
さらに注目すべきは、その技術的進化です。eプラットフォーム3.0を採用したことで、航続距離は最大510km(CLTC基準)に達し、EVとしての日常使いの安心感を大幅に高めました。加えて、PHEV版である「元 PLUS DM-i」には高効率のハイブリッドシステムが搭載され、ガソリンと電気をシームレスに使い分けることで驚異的な燃費性能を実現しています。これにより、「充電環境が不十分な地域でも安心して選べるBYD車」として、グローバル市場での競争力を獲得しました。
「元 PLUS」の登場は、BYDにとって単なる新型SUVの発売以上の意味を持ちます。国内外で急速に競争が激化するEV市場の中で、「性能・デザイン・実用性」を兼ね備えたモデルを送り出すことで、BYDが世界規模で存在感を高める起点となったからです。今振り返っても、このモデルはBYDの国際戦略の転換点であり、電動SUVの新しい基準を示した一台だったといえるでしょう。
Dragon Faceデザインと国際市場を意識した進化
「BYD・元 PLUS」の大きな特徴のひとつは、そのデザインにあります。BYDは2010年代後半からデザイン責任者にヴォルフガング・エッガー(元アウディのチーフデザイナー)を迎え、ブランドの顔となる「Dragon Face」デザインを全面的に採用し始めました。その集大成のひとつが、この元 PLUSに反映されています。
フロントマスクは、ドラゴンを思わせる力強い造形を基調にしつつ、グリルの面積を抑えてEVらしいクリーンな印象を与えています。鋭いLEDヘッドライトは横一文字に近い配置となり、ワイド感を強調。これにより、コンパクトSUVでありながら堂々とした存在感を放ちます。ボディラインも従来の「箱型SUV」的な印象を脱し、ルーフを緩やかに後方へ流すことでクーペライクなシルエットを実現しました。都市の風景にも映えるスタイリッシュさを前面に出しており、実用一辺倒のSUVとは一線を画しています。
インテリアも大幅に進化しました。中心に配置された大型の回転式ディスプレイは、BYDの象徴的な装備であり、横向きにすればナビやエンタメ用途に便利で、縦向きにすればSNSやアプリ表示に適したレイアウトになります。このユニークな仕組みはユーザー体験を豊かにし、中国市場だけでなく国際市場のユーザーからも高い評価を受けました。素材面でもソフトパッドやメタル調加飾がふんだんに用いられ、従来の「安っぽい内装」という批判を払拭。BYDが「世界でも戦える品質」を目指した努力が感じられる部分です。
このように元 PLUSは、デザインそのものが国際市場を強く意識していました。従来の中国メーカーの車は「価格重視で質感が低い」と見られることが多かったのに対し、このモデルでは欧州メーカーに近い造形と高級感を演出し、見た瞬間に「中国車らしくない」と思わせる仕上がりを実現しました。実際に海外メディアからも「BYDはデザインで欧州ブランドに匹敵するレベルに到達した」と評価されることが増え、この元 PLUSはその象徴的存在となったのです。
さらに実用性の面でも進化がありました。従来モデルより全長・全幅とも拡大され、ホイールベースも伸ばされたことで、後席の居住性や荷室の広さが格段に改善しました。都市向けSUVとして扱いやすいサイズ感を維持しながらも、グローバル市場で求められる「広さ」や「快適性」を兼ね備えた点は、海外ユーザーを意識した調整だと言えるでしょう。
総合すると、Dragon Faceデザインの完成度を高めつつ、インテリアや居住性でも国際基準を意識した元 PLUSは、BYDが「中国国内専用のメーカー」から「世界市場を狙うグローバルメーカー」へ飛躍したことを強く印象付けたモデルでした。

eプラットフォーム3.0と技術的進化
「BYD・元 PLUS」を語るうえで欠かせないのが、新世代の車両構造であるeプラットフォーム3.0の採用です。これは単なるEV用プラットフォームではなく、効率・安全・快適性を総合的に進化させた土台であり、BYDの技術力を世界に示す武器となりました。
まず注目すべきは、効率の高さです。モーターやインバーター、電池のパッケージングを最適化し、エネルギーロスを極限まで抑えることで、航続距離を大幅に改善しました。従来モデルでは300km〜400kmが一般的でしたが、元 PLUSでは最大510km(CLTC基準)という数値を達成し、日常使いだけでなくロングドライブにも対応できるようになったのです。この進化は、EVを選ぶ際に最大の不安要素とされる「走れる距離」を大きく改善し、ユーザーに安心感を与えました。
次に安全性です。eプラットフォーム3.0はBYD独自のブレードバッテリーを採用し、車体構造と一体化する形で搭載しています。このバッテリーは従来型に比べて高いエネルギー密度を持ちながらも熱暴走に強く、釘刺しテストでも発火しないという高い安全性を実証しました。さらに車体剛性の強化にも寄与し、衝突時のエネルギー吸収性能が高まったことで、家族が安心して乗れるSUVとしての信頼性を確立しました。
また、快適性の向上も見逃せません。プラットフォームの刷新によって床下をフラットにできたため、後席の足元スペースが広くなり、車内の静粛性も飛躍的に改善しました。EV特有のモーター駆動による滑らかさに加え、車内が静かで快適という要素が揃い、これまで「実用車」と見られがちだったBYD SUVに高級感が加わったのです。インフォテインメントシステムも大幅に進化し、OTA(オンラインアップデート)に対応するなど、常に最新機能を取り入れられる点もユーザーから高く評価されました。
さらに技術的進化は、バリエーション展開にも表れています。EV版に加えて、PHEV版である「元 PLUS DM-i」も用意され、こちらには高効率の1.5Lエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムが搭載されました。EVとガソリンを柔軟に使い分けられるこのシステムは、充電インフラが十分でない地域でも安心して選べる点が魅力でした。結果として、都市部のEVユーザーだけでなく、地方や海外市場においても幅広いニーズに応えることができたのです。
総じて、元 PLUSの技術的進化は「航続距離の不安を解消し、安全で快適なSUVを提供する」という点に集約されます。そしてその背景には、BYDがバッテリーメーカーとして培った強みと、自社開発によるEV専用プラットフォームを活かした開発力がありました。このモデルは単なる一台のSUVではなく、BYDが「世界基準のEVを作れるメーカー」であることを証明する存在だったのです。

グローバル展開と市場での評価
「BYD・元 PLUS」は、BYDが真の意味でグローバル市場へ挑戦するための主力SUVとして設計されました。それまでの「元」シリーズは中国市場を中心に展開されていましたが、PLUSは登場時から海外市場での販売を前提に作られていたのです。実際に発売直後から東南アジア、オセアニア、中東、中南米などへの輸出が始まり、のちにはヨーロッパ市場にも投入されました。
国際展開を視野に入れた証拠は、商品コンセプトにも表れています。従来の中国専売モデルでは価格や補助金に依存する部分が大きかったのに対し、元 PLUSは「航続距離」「安全性」「デザイン」「快適性」といった、世界中のユーザーが求める普遍的な価値に重点を置きました。特に航続距離は最大510km(CLTC基準)と実用的で、欧州基準でも400km近く走れる性能を確保。日常の移動だけでなく、郊外へのドライブや旅行にも使える安心感が高評価につながりました。
市場評価の中で特に注目されたのは、コストパフォーマンスの高さです。例えば欧州市場では、同等の航続距離や装備を持つEV SUVが4万〜5万ユーロに達するケースが多い中、BYD・元 PLUSはより低価格で提供されました。この「手の届くEV SUV」というポジションは、多くのユーザーに歓迎され、EV普及を加速させる一因となりました。
一方で、インテリアの質感やインフォテインメントの完成度も高く評価されました。大型回転ディスプレイやOTA対応のソフトウェアは、中国国内だけでなく海外でも「先進的でユニーク」と話題になりました。これにより「価格が安いから選ばれる車」ではなく、「価格以上の価値を提供する車」としてブランドイメージを引き上げることに成功したのです。
ただし課題も存在しました。欧州など一部市場では「ディーラー網やサービス体制が十分でない」という不安が指摘されました。また、長期的な耐久性やリセールバリューについては未知数とされ、購入をためらう声もありました。それでも実際に乗ったユーザーからは「静かで快適」「航続距離に不満がない」「家族で使うのにちょうどいいサイズ」といったポジティブな評価が多く寄せられました。
戦略的な意味では、元 PLUSはBYDが世界規模での販売を拡大するための“看板SUV”となりました。特にSUV需要が高い東南アジアや南米では、価格と性能のバランスが絶妙で、現地ユーザーにとって最も選びやすいEVのひとつとなったのです。そして、このモデルの成功が後に続く「ATTO 3」などのグローバルモデル展開を後押しし、BYDが世界のEV市場で確固たる地位を築くきっかけとなりました。
総じて、BYD・元 PLUSは「中国発のSUV」から「世界で通用するEV SUV」へと進化した象徴的な存在でした。単なる一モデルの枠を超えて、BYDというメーカーそのものの国際的評価を押し上げた功労者といえるでしょう。

まとめ
「BYD・元 PLUS」は、BYDがこれまで築いてきたSUVの系譜を大きく前進させたモデルでした。初代と2代目で市場に存在感を示し、Proでデザインと技術を洗練させた流れを受けて、PLUSはついに「世界基準で通用するSUV」として完成度を高めたのです。デザイン面ではDragon Faceをさらに磨き上げ、スタイリッシュで国際的に評価される外観を獲得しました。インテリアにおいても大型回転ディスプレイや質感向上により、単なる実用車を超えた快適性を実現しました。
技術面ではeプラットフォーム3.0を採用し、航続距離の大幅な改善、安全性の強化、そして静粛性と快適性の向上を同時に果たしました。さらにPHEV版のDM-iを展開することで、充電インフラが十分でない地域にも対応。これにより、都市部から地方まで幅広い層に選ばれる柔軟なSUVとなりました。BYDが持つバッテリー技術と電動化ノウハウの結晶が、この一台に込められているのです。
市場における評価も高く、中国国内にとどまらず東南アジア、南米、欧州など世界各国で販売され、ユーザーから「手の届く価格で航続距離も安心」と支持されました。価格以上の価値を提供するモデルとして、BYDのブランドイメージを大きく引き上げた功労者でもあります。課題としてはサービス体制や長期的な信頼性の確立が残されていますが、それを補って余りある存在感を示しました。