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インフィニティ・QX80:405馬力のV8が生んだ圧倒的存在感と走破力

インフィニティ・QX80(2代目)諸元データ

・販売時期:2010年~2017年
・全長×全幅×全高:5,305mm × 2,030mm × 1,925mm
ホイールベース:3,075mm
・車両重量:約2,700kg
・ボディタイプ:フルサイズSUV(7〜8人乗り)
・駆動方式:FR / 4WD(ALL-MODE 4WD)
・エンジン型式:VK56VD(V8 DOHC 直噴)
・排気量:5,552cc
・最高出力:405ps(298kW)/ 5,800rpm
・最大トルク:57.1kgm(560Nm)/ 4,000rpm
トランスミッション:7速AT
・サスペンション:前:ダブルウィッシュボーン / 後:ダブルウィッシュボーン
・ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(前後)
・タイヤサイズ:275/60R20(上級グレード)
・最高速度:約210km/h
・燃料タンク:98L
・燃費(EPA基準):市街地約5.9km/L、高速約8.5km/L
・価格:約6万ドル~(当時アメリカ市場)
・特徴:
 - 日産パトロールをベースに、本格オフロード性能を継承
 - 直噴V8エンジンで405馬力のパワー
 - 大型グリルと流麗なデザインによる存在感

 

2010年に登場した2代目インフィニティ・QX80は、前モデルの「QX56」と比べて大きな進化を遂げたフルサイズSUVでした。初代は日産アルマーダをベースとしたアメリカ市場専用のモデルでしたが、この2代目からは日産の世界戦略SUV「パトロール」をベースに開発され、より本格的なオフロード性能を持つラグジュアリーSUVへと変貌を遂げました。つまり、ファミリー向けの快適な大型SUVという枠を超えて、砂漠や岩場でも走れる屈強さを備えた「走れる高級SUV」へとシフトしたのです。

エンジンも進化し、初代が搭載していたVK56DE型から、直噴化されたVK56VD型へと世代交代しました。排気量は同じ5.6リッターながら、出力は320馬力から405馬力へと大幅にアップ。7速ATとの組み合わせにより、巨体を軽々と動かす余裕のある走りを実現しました。初代の力強さを受け継ぎながらも、より洗練された加速フィールや静粛性を手に入れた点は、多くのユーザーに歓迎されたポイントでした。

また、デザイン面でも大きく印象を変えています。初代の直線的で重厚なスタイルから一転して、2代目は曲線を活かした流麗なフォルムを採用しました。大型のクロームグリルとヘッドライトが強烈な存在感を放ち、街中でも郊外でも「ラグジュアリーSUV」としての風格を漂わせています。内装においても質感が一段と向上し、最新のエンターテインメント機能や安全装備が加わるなど、ユーザーの期待に応える充実ぶりでした。

初代が「北米専用の大型SUV」として誕生したのに対し、2代目は中東やロシアなど新しい市場でも広く受け入れられるモデルとなりました。まさにグローバルに展開するインフィニティブランドを象徴するフラッグシップSUVとなったのです。

 

日産パトロールをベースにした本格オフロード性能

2代目インフィニティ・QX80が初代と大きく異なる点のひとつが、ベース車両の変更でした。初代は北米専用モデルである日産アルマーダを基盤にしていましたが、2代目からは日産の伝統的なオフローダー「パトロール」をベースにしています。パトロールといえば、1950年代から中東やオーストラリアなど過酷な地域で活躍してきた本格四輪駆動車で、その信頼性と耐久性は世界的に高く評価されていました。その強固なシャシーを活かしたことで、QX80は単なる高級SUVではなく「ラグジュアリーと本格オフロードの両立」を実現したモデルとなったのです。

オフロード性能の象徴といえるのが「ALL-MODE 4WD」システムです。通常走行時は後輪駆動で燃費を抑えつつ、必要に応じて自動的に前輪へトルクを配分することで、滑りやすい路面や急勾配でも安心して走れるようになっていました。さらに、ドライバーが任意で2WD、4H、4Lを切り替えられるモードを備え、砂漠の砂丘から岩場のトレイルまで幅広いシチュエーションに対応可能です。こうした仕組みは、単なる都会派SUVとの差を明確にするものでした。

また、サスペンションにも工夫が凝らされていました。前後ともダブルウィッシュボーンを採用しつつ、ハイドロリック・ボディモーション・コントロールを導入。これは車体のロールを抑えるシステムで、舗装路での安定感を高めるだけでなく、オフロード走行時にもしなやかにサスペンションを動かし、タイヤをしっかりと地面に接地させる役割を果たしていました。結果として、荒れた路面でも乗員は大きな揺れを感じにくく、長距離移動も快適にこなせるSUVへと仕上がっていたのです。

こうした背景から、2代目QX80は特に中東市場で高い人気を得ました。砂漠地帯では高級車でありながらも確実に走破できる信頼性が求められますが、まさにその条件にぴったり当てはまっていたのです。ドバイやリヤドの街中ではラグジュアリーSUVとしての顔を持ち、郊外に出れば砂丘を駆け抜ける頼れる相棒になる。この二面性が、エスカレードやナビゲーターといったアメリカ生まれのSUVにはない魅力として支持された理由でした。

初代が「北米市場専用の大型SUV」だったのに対し、2代目は「世界で通用する本格派ラグジュアリーSUV」へと進化したといえます。パトロール譲りのオフロード性能は、QX80のキャラクターを単なる贅沢な移動空間にとどめず、走るフィールドを広げる要素となり、インフィニティブランドに新しい価値をもたらしました。

 

進化したV8エンジンと走りの余裕

2代目インフィニティ・QX80の大きな進化点のひとつが、新世代の5.6リッターV8エンジン「VK56VD」の搭載でした。初代が搭載していたVK56DEは自然吸気のDOHCエンジンで320馬力を発揮していましたが、2代目では直噴化が施され、出力は一気に405馬力へと向上。最大トルクも57kgmを超え、巨体をものともせず余裕ある走りを実現しました。単純に馬力を上げただけでなく、レスポンスや静粛性が磨かれたことで、ラグジュアリーSUVにふさわしい洗練されたドライビングフィールが得られるようになったのです。

組み合わせられるトランスミッションも進化しています。初代が5速ATだったのに対し、2代目では7速ATを採用しました。これにより低速域では力強く、高速巡航では回転数を抑えて静かに、というメリハリのある走りが可能になりました。特に高速道路でのクルージング性能は格段に向上し、V8のパワーを感じさせつつも穏やかで落ち着いた乗り味を提供してくれます。長距離ドライブを日常的にこなすユーザーにとって、この静粛性と余裕は大きな魅力でした。

走行性能の進化は、単にエンジンとトランスミッションの改良にとどまりませんでした。サスペンションやボディ剛性の向上により、初代よりも明らかに安定感が増していました。重心の高い大型SUVは往々にしてロールが大きくなりがちですが、QX80はその重量級ボディをしっかりと支え、カーブでも落ち着いた挙動を見せました。乗り心地は快適そのもので、まるで高級セダンに乗っているかのような感覚を覚えた人も少なくありません。

一方で、大排気量エンジンゆえに燃費は決して良好とはいえませんでした。市街地では6km/Lに届くかどうか、高速道路でも8km/L前後という数字にとどまります。しかし、北米や中東といった地域では燃費よりもパワーと快適性が重視される傾向が強く、その点でQX80はユーザーの期待を裏切ることはありませんでした。むしろ「燃費を気にしないで走れる贅沢さこそが、このクルマを選ぶ理由」と考えるオーナーが多かったのです。

こうして2代目QX80は、初代の力強さを引き継ぎながら、より洗練された走りを手に入れました。400馬力を超える大排気量V8を惜しげもなく搭載する姿勢は、環境性能が重視されつつあった当時の潮流とは逆行しているようにも見えましたが、その豪快さがむしろ「フルサイズSUVらしさ」を体現するものでした。走りの余裕こそが、このクルマを選ぶ最大の理由だったのです。

 

存在感あるデザインと豪華装備

2代目インフィニティ・QX80が登場した際、まず目を引いたのはそのデザインでした。初代の直線的でやや武骨な雰囲気から一転し、2代目は曲線を取り入れた流麗なフォルムを採用。巨大なクロームグリルと特徴的なヘッドライトの組み合わせは、遠くから見ても一目でQX80とわかる存在感を放っていました。全長5.3メートルを超える堂々たるボディサイズと相まって、街中に停めれば周囲の視線を集めることは間違いありません。まさに「動く豪邸」と呼ぶにふさわしい迫力でした。

インテリアも大幅に進化しました。広大なキャビンには上質なレザーとウッドパネルが惜しげもなく使われ、ステッチの細部にまで高級感が漂っていました。特に2列目シートはキャプテンシート仕様を選択でき、後席に座る乗員もまるでファーストクラスのような快適さを味わうことができました。さらに、3列目シートも大人が無理なく座れる広さを確保しており、大家族や仲間との長距離旅行でも余裕を感じられるつくりとなっていました。

装備面では、ラグジュアリーSUVらしく当時の最新技術が盛り込まれていました。高級オーディオシステム「Boseサラウンド」を搭載し、まるでコンサートホールのような音響空間を楽しむことができました。また、後席モニターを備えたエンターテインメントシステムも用意され、子どもたちが映画を見ながら移動できることから、ファミリー層に特に好評でした。さらに、パワーリフトゲートや電動格納式3列目シートなど、利便性を高める装備も充実していました。

安全性能においても進化が見られました。インフィニティ独自の「Around View Monitor(アラウンドビューモニター)」を採用し、大柄な車体でも周囲の状況を把握しやすくなっていました。車線逸脱警報や前方衝突警報といった先進的な安全装備も搭載され、単なる豪華さだけでなく、家族を安全に守る信頼感を提供していたのです。初代では「豪華な内装を備えた大型SUV」という印象が強かったのに対し、2代目では「高級感・実用性・安全性」を高次元で融合した完成度の高い一台へと成長していました。

こうした豪華装備と存在感あるデザインの組み合わせにより、2代目QX80は北米や中東だけでなく、ロシアやオーストラリアなどでも人気を拡大しました。どの地域でも「ステータスシンボル」として受け入れられ、ライバルのエスカレードやLX570に真っ向から挑む存在となったのです。インフィニティが世界市場で高級SUVブランドとしての地位を固めるうえで、このモデルが果たした役割は非常に大きかったといえるでしょう。

 

まとめ

2代目インフィニティ・QX80は、初代の持っていた「北米専用の大型SUV」という性格を大きく進化させた一台でした。日産パトロールをベースにしたことで本格的なオフロード性能を獲得し、都市だけでなく砂漠や山岳地帯といった過酷な環境でも走れる信頼性を備えました。さらに、直噴化された5.6リッターV8エンジンによって405馬力の圧倒的なパワーを発揮し、7速ATと組み合わせることで余裕ある走行フィールを実現しました。初代が豪快な力強さを魅力としたのに対し、2代目は洗練された走りと高い完成度を兼ね備えたのです。

加えて、存在感あふれるデザインと豪華装備により、ラグジュアリーSUVとしての地位も確立しました。広々とした室内に上質な素材をふんだんに使い、快適性と安全性を両立させることで、家族や仲間と過ごす時間をより豊かに彩る存在となりました。その結果、2代目QX80は北米だけでなく中東やロシアといった新しい市場でも人気を博し、グローバルなフラッグシップSUVへと成長しました。

初代が築いた基盤を受け継ぎつつ、より国際的な視野で磨かれたこのモデルこそ、現在のQX80が「世界的なラグジュアリーSUV」として評価されるための大きな一歩だったといえるでしょう。