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HiPhi・X:未来から来たラグジュアリーEVの正体とは?

HiPhi・X 諸元データ

・販売時期:2020年12月〜
・全長×全幅×全高:5200mm × 2062mm × 1618mm
ホイールベース:3150mm
・車両重量:約2580kg
・ボディタイプ:5ドアSUV(クロスオーバー)
・駆動方式:AWD(前後モーター)
・エンジン型式:EVモーター
・バッテリー容量:97kWh(CATL製)
・最高出力:598ps(440kW)
・最大トルク:820Nm(約83.6kgm)
トランスミッション:シングルスピード
・サスペンション:前:ダブルウィッシュボーン / 後:マルチリンク
・ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
・タイヤサイズ:265/45 R22
・最高速度:200km/h
・燃料タンク:なし(EV)
・航続距離(CLTCモード):約550〜560km
・価格:約68万元〜80万元(約1400万円前後)
・特徴:
 - フロント+観音開き+小型リアハーフドアという3段ドア構成
 - 4輪独立制御エアサスペンション搭載
 - AI・クラウド連携型「HiPhi OS」採用

 

初めてHiPhi・Xを見たとき、多くの人は「これが市販車なのか?」と疑ったに違いありません。未来的すぎるスタイルだけでなく、搭載された技術の数々は、もはや“クルマ”というより“巨大なスマートデバイス”と呼ぶほうがしっくりくるほどです。開発したのは中国の新興メーカー「Human Horizons(ヒューマン・ホライゾンズ)」。彼らは自動車メーカーというより、モビリティとスマートシティの融合を目指すテクノロジー企業に近い立ち位置にあります。

HiPhi・Xの核となるのが、独自開発の「HiPhi OS」。これはクラウドベースで常時アップデートが可能なAI制御システムで、車両全体の動作をリアルタイムでコントロール。走行中のバッテリー管理だけでなく、サスペンションや照明、ドアの開閉に至るまで、すべてが統合制御されています。オーナーはスマホアプリを通じてあらゆる設定をカスタマイズ可能で、もはや「乗るたびに新しい体験」が味わえる車とも言えるでしょう。

しかも驚くべきは、その思想が“クルマの外”にまで及んでいること。HiPhi・Xは将来的にスマートシティのインフラと連動する前提で設計されており、街とクルマがデータをやりとりして交通効率を最適化する、そんな未来を本気で目指しています。ただの高級EVでは終わらせない。HiPhi・Xは「移動する知能」として、新時代のライフスタイルまで変えようとしているのです。

 

開くぞドアが!人目を釘付けにするギミック満載ボディ

HiPhi・Xの外観はとにかく派手。細部まで作り込まれたボディは、空力と視覚的インパクトを両立させたもので、フロントマスクにはLEDドットが内蔵され、アイコンやアニメーションを自由に表示できます。もはやこれは「走る広告塔」とも言える仕様。夜の街を走れば注目を集めること間違いなしです。

そして最大の特徴が、まるでスーパーカーのようなドア構成。前席は通常のフロントドア、後席は観音開きのスーサイドドア、さらにその上にちょこんと乗っかるような「ウイングドア」が追加され、3段構造で開くのです。これがまた未来感たっぷりで、まるで宇宙船のハッチのよう。見た目のインパクトもさることながら、乗り降りのしやすさもしっかり考慮されていて、実用性と演出性の両立に成功しています。

インテリアも徹底的にデジタル化されており、前席には3つの大型ディスプレイ、助手席にも独立したタッチスクリーンを装備。後部座席はシートヒーター&ベンチレーター付きのキャプテンチェアで、リムジンさながらの快適空間が広がります。素材やフィニッシュも高級志向で、EV=地味というイメージを覆すラグジュアリー感に満ちています。

 

中国発ラグジュアリーEVは、世界を目指すのか?

HiPhi・Xが登場したとき、多くの海外メディアが「テスラへの挑戦者」として取り上げました。実際にスペックだけ見れば、598馬力のAWDシステムに約560kmの航続距離、自動運転技術(L3相当)や5G通信にも対応しており、欧州のプレミアムEVとも肩を並べる性能を持っています。ただし、HiPhi・Xの本当の武器はスペックだけではありません。それは“体験そのもの”です。

中国国内ではショールームや納車体験すら演出されており、「HiPhi HUB」と呼ばれるブランド拠点では、試乗だけでなくアートやテックイベントも行われています。このような“車を売る”というより“ブランド体験を提供する”姿勢は、まさにアップルやディズニーのような手法。このあたりにも、既存の自動車メーカーとは異なる価値観が垣間見えます。

現在のところ、HiPhi・Xは中国市場が中心ですが、すでにドイツやノルウェーなど欧州への輸出が始まっており、さらに中東地域やアジア圏での拡販も視野に入れています。日本での正規販売はまだ未定ですが、もし上陸すれば、間違いなく街中の視線を独り占めする存在になるでしょう。未来のラグジュアリーEVとは何か? その答えをHiPhi・Xは体現しようとしているのです。

 

まとめ

HiPhi・Xは、単なる高級EVでもなく、奇抜なだけのコンセプトカーでもありません。Human Horizonsが目指すのは、都市とモビリティの融合という壮大なビジョン。その中心にあるのが、まるでスマホのようにアップデートされ続けるHiPhi・Xという存在です。

近未来感あふれるドアギミックや、デジタルで包み込まれた快適なキャビン、そしてAIやクラウドと連携した制御システム。どれをとっても「今までにない体験」が詰まっており、テスラやドイツ御三家とは違う軸で勝負を挑んでいます。

中国発の挑戦者が、世界のラグジュアリーカー市場でどこまで食い込めるのか。その行方はまだ未知数ですが、HiPhi・Xはすでに多くの人に「未来のかたち」を見せてくれています。次世代のモビリティに興味があるなら、このクルマは一度チェックしておいて損はありません。