ヒョンデ・アイオニック5(ロングレンジ RWD)諸元データ
・販売時期:2021年〜(日本導入は2022年より)
・全長×全幅×全高:4,635mm × 1,890mm × 1,605mm
・ホイールベース:3,000mm
・車両重量:約1,920kg
・ボディタイプ:5ドアクロスオーバーSUV
・駆動方式:後輪駆動(RWD)
・エンジン型式:モーター(E-GMPプラットフォーム)
・排気量:なし(電気モーター)
・最高出力:218ps(160kW)/ 4,600〜8,600rpm
・最大トルク:35.7kgm(350Nm)/ 4,600rpm
・トランスミッション:シングルスピード固定ギア
・サスペンション:前:マクファーソンストラット / 後:マルチリンク
・ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
・タイヤサイズ:235/55R19(グレードによっては20インチもあり)
・最高速度:約185km/h
・燃料タンク:なし(バッテリー容量:72.6kWh)
・燃費(WLTCモード):約6.3km/kWh(換算値として約390kmの航続距離)
・価格:5,000,000円
・特徴:
- 800V急速充電対応(18分で10%→80%充電)
- 超ロングホイールベースで室内広々
- ユニークなレトロフューチャーデザイン
「ヒョンデ」と聞いてピンとこない方もいるかもしれませんが、かつての「ヒュンダイ」といえば思い出す方もいるのでは?
実はこの韓国メーカー、いまや世界の電気自動車(EV)市場で非常に存在感を放っているのです。そんなヒョンデが本気で未来を描いた1台、それが「アイオニック5」です。
このクルマ、一見すると80年代のクルマのようなスクエアなデザイン。ところが中身は最新EVそのもので、800Vの急速充電に対応、さらに広々とした室内空間や先進の運転支援システムを搭載。見た目はレトロ、中身はフューチャーというギャップが、多くの人の心をつかんでいます。
さらに注目したいのは、その存在感が日本にも静かに浸透してきている点。京都のMKタクシーがこのアイオニック5を導入したというニュースは、電動化の波がいよいよ本格化してきたことを示すサインとも言えそうです。
今回はこのユニークなEV「ヒョンデ・アイオニック5」について、そのデザインの秘密、革新的な中身、そして世界での評価と日本市場での可能性を3つの切り口から紐解いていきます。
未来を現実に変えたデザイン:レトロ×ハイテクの融合
ヒョンデ・アイオニック5を初めて見たとき、多くの人が感じるのは「なんだか懐かしいようで、未来的」だという感覚。これは偶然ではなく、しっかりと狙って設計されたものです。このモデルのデザインは、1974年にヒョンデが発表したコンセプトカー「ポニークーペ」にインスパイアされています。当時、イタルデザインの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが手がけたそのモデルは、韓国初のコンセプトカーであり、同時に“夢”の象徴でもありました。
そんなレトロなDNAを受け継ぎながらも、アイオニック5は完全に新しいEVとして誕生しています。特徴的なのは、そのピクセル型LEDヘッドライトとリアランプ。まるで8ビットゲームのグラフィックのようなデザインは、懐かしさと未来感を同時に表現しています。また、シャープなキャラクターラインやクリーンな面構成は、EVらしいミニマルさを強調しつつも、どこか80年代の空気を漂わせる絶妙なさじ加減です。
さらに、デザインは見た目だけではなく機能にもつながっています。例えば空力性能を意識したホイールデザインや、スムーズな空気の流れを生むボディラインなどは、電動車としての効率にも大きく貢献。デザインと技術が完全に融合した1台であることが、アイオニック5の真骨頂なのです。見た目のインパクトと実用性を兼ね備えたこのスタイルは、EV時代の新しい「美しさ」の提案と言えるでしょう。
E-GMPプラットフォームが生んだ電動革命:アイオニック5の中身
ヒョンデ・アイオニック5の魅力は、外観の斬新さだけにとどまりません。その“中身”こそが、世界を驚かせた真の革新ポイント。開発のベースとなっているのは、ヒョンデ・グループが次世代EV向けに開発した**専用プラットフォーム「E-GMP(Electric-Global Modular Platform)」**です。この名前、ちょっと無骨ですが、実はこのクルマの未来感を支える“心臓部”なんです。
まず注目すべきは、800Vという高電圧アーキテクチャ。これはポルシェ・タイカンなどの高級EVにも使われる規格で、最大350kWの急速充電に対応します。つまり、理論上はたった18分でバッテリーの10%から80%までをチャージできるという驚異のスピード。これにより、EVの最大の弱点とされる“充電待ち”のストレスを大幅に軽減してくれます。
また、E-GMPのメリットはそれだけではありません。エンジンが存在しない前提で設計されたこのプラットフォームでは、ホイールベースが3,000mmという異例の長さを誇ります。これにより、後部座席の足元スペースはまるでリムジン級。床が完全にフラットなこともあり、センターコンソールがスライドできたりと、室内の自由度が非常に高いのです。
走行面でも高い安定性を実現しており、バッテリーを床下に配置することで低重心化。これによりコーナリング性能も向上し、EVにありがちな「重さ」を感じさせません。快適性と走りの良さ、そして利便性がこの1台に凝縮されているというわけです。
世界が驚いた韓国EVの逆襲:国際的評価と日本での受け入れ
かつて韓国車といえば、「安いけれど質がイマイチ」というイメージを抱いていた方も多かったかもしれません。しかし、ヒョンデ・アイオニック5の登場で、その認識は一気に変わりました。2022年には**「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)」を含む三冠を獲得**。欧州カー・オブ・ザ・イヤーにもノミネートされ、各国の専門家から高い評価を得ました。特にデザイン、技術革新、持続可能性といった点で、多くのジャーナリストの心をつかんだのです。
注目すべきは、こうした評価が単なるイメージ戦略ではなく、実際の走行性能や利便性、そして品質によって裏打ちされていること。EVとしての性能はもちろん、乗り心地や内装の質感、先進的なUIなど、多くの面で「テスラや欧州プレミアムEVと堂々と戦えるレベル」に達しているのが、評価の根拠となっています。
そしてこの世界的な成功が、じわじわと日本市場にも影響を与え始めています。その象徴的な出来事が、京都のMKタクシーによるアイオニック5の導入です。環境性能と快適性を両立したこのEVは、静かでスムーズな乗り心地と広々とした室内が求められるタクシー業界にもぴったり。乗客からも好意的な反応が多く、今後さらに台数を増やす計画もあるとのことです。
日本ではまだ「ヒョンデ」というブランドに対する先入観があるのは確かです。しかし、世界の評価や実際の使用例を通して、韓国車は“価格で勝負”の時代から“技術と品質で選ばれる”ステージへ進化しつつあるのです。アイオニック5はその最前線を走る1台と言っていいでしょう。
まとめ
ヒョンデ・アイオニック5は、単なるEVではありません。レトロとフューチャーが融合した独自のデザイン、E-GMPによる圧倒的な技術力、そして世界中で認められた確かな実力。これらが三位一体となって、未来のモビリティを今に引き寄せる1台です。
デザインだけ見れば「おしゃれなコンセプトカーかな?」と思わせる一方で、実際には超実用的で、電気自動車として非常に完成度が高いのがポイント。そしてそれが「賞レースの常連」や「欧州での好評」につながっているのです。さらに、日本国内でも少しずつ導入が進み、MKタクシーのような公共交通分野での採用は、クルマの品質と信頼性を何より物語っています。
これまで“韓国車”というだけで敬遠していた人がいたとしたら、アイオニック5はその偏見を覆す絶好のチャンスです。先進性・快適性・実用性を兼ね備えたEVとして、間違いなく一見の価値あり。未来のスタンダードを体感したいなら、このクルマを見逃す手はありません。