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アウディ・A1:小さなボディに凝縮された「プレミアム」な魅力の秘密とは?

アウディ・A1(初代・1.4 TFSIスポーツ)諸元データ

・販売時期:2010年~2018年
・全長×全幅×全高:3970mm × 1740mm × 1440mm
ホイールベース:2465mm
・車両重量:1200kg
・ボディタイプ:3ドアハッチバック(後に5ドアモデルも追加)
・駆動方式:FF(前輪駆動)
・エンジン型式:1.4 TFSI(直列4気筒DOHCターボ)
・排気量:1394cc
・最高出力:122ps(90kW)/5000rpm
・最大トルク:20.4kgm(200Nm)/1500-4000rpm
トランスミッション:7速Sトロニック(デュアルクラッチAT)
・サスペンション:前:マクファーソンストラット / 後:トーションビーム
・ブレーキ:前後ディスク
・タイヤサイズ:215/45R16
・最高速度:203km/h
・燃料タンク:45L
・燃費(JC08モード):約17.8km/L
・価格:約290万円~
・特徴:

  • 小さくてもアウディらしいプレミアム感を凝縮した内外装デザイン。

  • デュアルクラッチの「Sトロニック」で滑らかな変速と高い走行性能。

  • ライバルのMINIを強く意識し、プレミアムコンパクト市場に新風を起こしたモデル。

 

アウディA1は2010年にデビューした、小さいけれど本格的なプレミアムコンパクトカーです。「小さなアウディ」と呼ばれるA1の誕生は、実はライバルであるBMW傘下のMINIに対抗するためだったと言われています。過去にアルミ製ボディを使った先進的なコンパクトカー「A2」で販売が伸び悩んだアウディが、その教訓を胸に再挑戦したのがこのA1でした。小さなボディながらも上質な質感と高い走行性能を実現したA1は、多くのユーザーの心をつかみました。今回は、そんなA1の開発秘話から特徴、高性能モデルのS1に至るまで、アウディの思いが詰まったストーリーをじっくりご紹介します。

 

「小さなアウディ」の誕生秘話:プレミアムコンパクトという新たな市場開拓

アウディA1が登場した背景には、BMWが展開するMINIの成功がありました。ヨーロッパを中心に爆発的に売れていたMINIの人気に焦りを感じたアウディは、これまでの高級セダンや大型車中心のラインナップとは違った、新たなマーケット開拓が必要だと考えました。そこで立ち上がったプロジェクトのコードネームはずばり「ミニキラー」。そのため、A1の開発陣は「小さくてもプレミアム」という新しいカテゴリーを創り出すべく、デザインや質感、走行性能に徹底的にこだわりました。

A1のデザインには2007年東京モーターショーで初披露されたコンセプトカー『メトロプロジェクト・クワトロ』が元となっています。当時の開発チームは「コンパクトなクワトロ」をテーマに、街乗りに最適でかつ高級感を損なわないスタイルを追求しました。特にA1の内装は上位モデルと同じ素材やスイッチ類を積極的に採用し、小型車だからと妥協しないアウディのプライドを示しています。

実はこのA1誕生の陰には、かつての失敗作とも言われた「A2」の教訓がありました。A2は軽量アルミボディという革新的な技術を搭載したものの、そのコスト高から思ったほど販売が伸びませんでした。この反省からA1では現実的な価格帯でのプレミアム感を意識し、結果的に「小さなプレミアムカー」という新ジャンルを確立させました。

アウディA1の魅力とは?:小さくてもプレミアムなその特徴に迫る

A1最大の魅力は、小さいボディながらもアウディらしいプレミアムな質感にあります。ボディサイズは全長3970mmと非常にコンパクトですが、見た目の上質さ、細部に至る仕上げの丁寧さは、上位モデルに引けをとりません。特に内装は本革シートやアルミ調パネル、シックな配色を採用することで、「小型車=チープ」というイメージを覆しました。

走りの面でもA1は優秀です。デュアルクラッチ式の7速「Sトロニック」は滑らかな変速を実現し、市街地走行から高速道路までストレスのないドライブが楽しめます。また、燃費性能にも優れており、JC08モードで約17.8km/Lと経済性も魅力的です。運転が楽しく、かつ実用的というバランスは、まさにプレミアムコンパクトの理想形とも言えるでしょう。

さらに、A1は安全性にも妥協しません。最新鋭の電子制御システムや高剛性ボディ、前後ディスクブレーキを標準装備することで、小型ながらも高い安全基準をクリアしています。「小さな高級車」というコンセプトは、ただのデザインや装備だけでなく、安全面でも徹底的に貫かれているのです。

高性能モデル「S1」の衝撃:コンパクトボディに秘められたモンスター

A1の高性能バージョンとして登場したのがS1です。その最大の特徴は、わずか4m未満の小型ボディに2リッターのターボエンジンと四輪駆動「クワトロ」を詰め込んだことでした。これにより、最高出力231ps、最大トルク370Nmという強力なパフォーマンスを発揮します。0-100km/h加速は5.8秒とスポーツカー並み。街中での機敏な動きはもちろん、サーキット走行も視野に入れた高性能モデルです。

S1はかつての伝説的ラリーカー「スポーツクワトロS1」を彷彿とさせるネーミングが与えられ、アウディファンからも熱烈な歓迎を受けました。標準のA1とは違う専用のサスペンションや強化ブレーキ、スポーツシートを備えるなど、徹底したスポーツ仕様になっています。

A1シリーズの中で最も過激でエモーショナルなモデル、それがS1でした。小型で扱いやすく、街中を軽快に駆け抜ける一方で、ひとたびアクセルを踏み込めばレーシングカーさながらの刺激的な走りを楽しめるのです。

まとめ

アウディA1は「小さいけど本物のプレミアムカー」という新しいカテゴリーを見事に開拓しました。開発時の苦労や、過去の失敗を活かした戦略的なモデルとしての成功は、多くの人に愛され続ける理由でもあります。都会に映えるデザインや高い実用性、そしてS1という特別なモデルまで、A1には小さなボディに大きな魅力が詰まっています。