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ジェンティ・エイキロン:フランス職人が手がけた“幻のハイパーカー”の正体とは?

ジェンティ・エイキロン(Genty Akylone)諸元データ

※代表的な「Akylone Road Legal version(公道走行可能モデル)」のスペックを記載

・販売時期:2020年(発表)〜生産開始未確認(少量限定生産)
・全長×全幅×全高:4480mm × 2050mm × 1180mm
ホイールベース:2750mm
・車両重量:約1200kg
・ボディタイプ:クーペ
・駆動方式:MR(ミッドシップ・後輪駆動)
・エンジン型式:オリジナル設計・V8ツインターボ
・排気量:4.8L
・最高出力:1200ps(883kW)/未公開
・最大トルク:128kgm(1254Nm)/未公開
トランスミッション:7速シーケンシャル(パドルシフト)
・サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
・ブレーキ:カーボンセラミックディスクブレーキ
・タイヤサイズ:前255/30ZR20 / 後345/30ZR20
・最高速度:350km/h以上(想定値)
・燃料タンク:未公表
・燃費(JC08モード):未公表
・価格:50万ユーロ以上(推定)
・特徴:
 - 圧倒的パワーと軽量ボディによる驚異的加速性能
 - カスタムオーダーによる内外装デザイン
 - 公道版とサーキット専用モデルの2仕様展開

 

「ジェンティ・エイキロン(Genty Akylone)」という名前を聞いて、すぐに思い浮かぶ人はなかなかのカーマニアでしょう。でもこのクルマ、知れば知るほど魅力があふれてくる“知る人ぞ知る”存在なのです。スーパーカーを超え、ハイパーカーと呼ばれるジャンルに属するこのマシンは、なんとフランスの小さなメーカーが作り上げたもの。大手のような資金力もバックアップもない中、ただ「理想のクルマを作りたい」という情熱だけで開発が始まりました。

車名の「エイキロン」はギリシャ神話に出てきそうな響きですが、実際の出自はやや謎めいていて、それもまたこのクルマの神秘的な魅力につながっています。デザインは官能的で、エンジンスペックはモンスター級。しかも公道を走れる仕様と、サーキット専用の“走りに振り切った”バージョンの両方が用意されているという贅沢ぶり。こんなクルマ、普通のメーカーにはまず作れません。

今回は、このジェンティ・エイキロンの開発背景やスペック、そして異なる2つの仕様について、初心者の方でもワクワクしながら読めるようにご紹介していきます。小規模だからこそ実現できた究極の一台、その魅力に迫ってみましょう!

 

幻のフランス製ハイパーカー、ジェンティ・エイキロン誕生の背景

ジェンティ・エイキロンの開発が始まったのは2007年。当時、世界はブガッティ・ヴェイロンの登場に湧き、1000馬力超のハイパーカーが現実になった時代でした。しかし、それに挑むのがわずか数人のフランス人エンジニアチームだとは、誰も思っていなかったでしょう。ジェンティ・オートモビルの創業者フランク・ジェンティは、大手メーカーの出身ではなく、むしろ“独立系の夢追い人”。「完璧なドライビングエクスペリエンスを持つクルマを自らの手で生み出したい」という、シンプルだけど熱すぎる想いから、このプロジェクトはスタートしました。

開発当初は資金も設備も限られ、クラウドファンディングや少数のスポンサーによって資金調達を行うなど、かなり“インディーズ”なスタイル。試作車がメディアに登場するまでに数年、正式なプロトタイプが姿を見せたのは2011年のジュネーブ・モーターショー。会場の片隅にぽつんと展示されたその車は、まるでフランス製のフェラーリとでも言いたくなるようなエレガントさとパワフルさを漂わせていました。

その後も試行錯誤を重ねながら、製品化にこぎつけたのは2020年。なんと13年の歳月を経てついに、世界にわずか15台のみが生産される計画の“ジェンティ・エイキロン”が完成したのです。まさに執念の結晶。大量生産とは真逆の、クラフトマンシップとこだわりにあふれたクルマづくりは、多くのクルマ好きを魅了してやみません。

 

1000馬力超え!ジェンティ・エイキロンのモンスター級スペックを解説

ジェンティ・エイキロンを語る上で、やはり無視できないのがそのとんでもないスペックです。「フランス製の手作りハイパーカーでしょ?ちょっと珍しいだけでしょ?」と思っている人がいたら、ここで一気にその認識を覆しましょう。エイキロンの心臓部には、V型8気筒ツインターボエンジンが搭載されており、なんと1200馬力という怪物級の出力を発揮します。この数字、ランボルギーニマクラーレンのハイパフォーマンスモデルをも凌ぐレベルです。

しかも、この1200馬力を支えるボディは、たったの約1200kg。ここでピンときた方、そうです。ほぼ1馬力=1kgのパワーウェイトレシオというわけで、これはフォーミュラカー並の加速性能を意味します。0-100km/h加速はおおよそ2.7秒前後とされており、まさに異次元のスピード体験。トップスピードは350km/h以上とも噂されており、まさに“地上を走る戦闘機”と言っても過言ではありません。

ただ速いだけじゃないのがエイキロンの魅力。シャシーカーボンモノコック構造で、サスペンションは前後ともにダブルウィッシュボーン式。ブレーキは信頼のカーボンセラミックディスクを採用し、しっかり止まる、曲がる、走るという三拍子を高次元でバランスさせています。ギアボックスも7速のシーケンシャルパドルシフトで、操作感はピュアなレーシングカーそのもの。見た目の美しさに騙されがちですが、実際は中身がものすごく“本気”な一台なのです。

 

“ドリームカー”を現実に。公道仕様とサーキット仕様、2つの顔を持つハイパーカー

ジェンティ・エイキロンの面白いところは、**「公道仕様」と「サーキット仕様」**という2つの明確なバージョンが存在する点です。どちらも共通するのは圧倒的なパフォーマンスと美しいデザインですが、その目的と味つけは大きく異なります。まず「Akylone Road Legal」はその名の通り、ナンバーを取得して公道を走ることができるモデル。内装にはある程度の快適装備も備わっており、レザーやカーボンを組み合わせたラグジュアリーな雰囲気も魅力です。とはいえ、ここは“ジェンティ流”。ラグジュアリーといっても、徹底した軽量化やドライバー中心のコクピットデザインが基本となっており、走るための空間に美しさを宿したような印象です。

一方、サーキット専用の「Akylone Track version」は、もはや“合法的なモンスター”。不要なものはすべて削ぎ落とし、ロールケージ、レーシングハーネス、アクティブエアロといった本格仕様が標準装備。パワートレインは同じながら、セッティングが全く異なり、シャープな応答性とダイレクトなハンドリングを追求しています。このモデルは富裕層の趣味車というよりも、まるでプライベートチームが運用するGTカーのような存在。限界走行を楽しむためにチューニングされ尽くした一台なのです。

この2仕様を用意した背景には、「クルマとは、ただ所有するものではなく、“走らせてこそ”意味がある」というジェンティの哲学が感じられます。街中で視線を釘付けにする公道仕様も良し、サーキットで己の限界に挑むも良し。どちらを選んでも“夢を現実にするための道具”としての存在感が光ります。市販車としてここまで理想を形にしたクルマは、今や世界中を探してもなかなか出会えません。

 

まとめ

ジェンティ・エイキロンは、ただのハイパーカーではありません。ブガッティやフェラーリのような大手が作るハイパフォーマンスマシンとは違い、ひと握りの情熱家が「理想のクルマとは何か?」を追い求めてカタチにした、魂の結晶です。
エイキロンは見た目の美しさ、スペックの派手さだけでなく、開発の背景や設計哲学にも深いストーリーが詰まっています。大手には真似できないような自由な発想と徹底的なこだわり。そこにこそ、このクルマの最大の魅力があると言っていいでしょう。

公道を優雅に駆け抜けるもよし、サーキットで限界を試すもよし。いずれにしても、これはクルマ好きが一生に一度は体験してみたい“夢の塊”です。もしどこかのイベントやモーターショーでこの車に出会えることがあれば、それはとてもラッキーな瞬間。
ジェンティ・エイキロンは、まさに少数精鋭のフランス職人魂が宿った走る芸術品なのです。