日産・リーフ(初代・Gグレード)諸元データ
・販売時期:2010年12月~2017年9月
・全長×全幅×全高:4445mm × 1770mm × 1545mm
・ホイールベース:2700mm
・車両重量:1520kg
・ボディタイプ:5ドアハッチバック
・駆動方式:前輪駆動(FF)
・エンジン型式:EM61型交流同期モーター
・排気量:なし(電動モーター)
・最高出力:109ps(80kW)/2730〜9800rpm
・最大トルク:28.6kgm(280Nm)/ 0〜2730rpm
・トランスミッション:電気式CVT
・サスペンション:前:ストラット / 後:トーションビーム
・ブレーキ:前後ともベンチレーテッドディスク
・タイヤサイズ:205/55R16
・最高速度:約145km/h
・燃料タンク:なし(24kWhリチウムイオンバッテリー搭載)
・燃費(JC08モード):約8.5km/kWh(航続距離200km)
・価格:約376万円(補助金適用前)
・特徴:
- 世界初の量産EVとして登場
- 静粛性とスムーズな加速が特徴
- CHAdeMO方式の急速充電に対応
今でこそ街中を走るEV(電気自動車)を見かけるのは当たり前になってきましたが、ほんの十数年前までは「未来の乗り物」として語られることのほうが多かったのです。そんな時代に風穴を開けたのが、2010年に登場した初代・日産リーフでした。
このクルマは、ガソリンを一滴も使わず、家で“充電”する乗り物という、当時の常識を覆すような存在。その先進性はまるでSF映画から飛び出してきたようで、実際に走っている姿を見るだけで未来が現実になった気分を味わえたものです。
もちろん登場当初は、「どこで充電するの?」「電池、すぐダメになるんじゃ?」という不安の声もたくさんありました。それでも、リーフは着実に実績を積み上げ、世界初の本格量産EVとしての道を切り拓いてきました。
本記事では、そんな初代リーフの「誕生の背景」「走りの特徴」、そして「世界への影響と未来への遺産」まで、EVの先駆けとなった一台の物語をじっくりと追っていきたいと思います。
「世界初の量産EV」としての誕生秘話とインパクト
2000年代後半、地球温暖化とエネルギー問題がクローズアップされる中、自動車業界にも「脱ガソリン」の波が押し寄せていました。ハイブリッド車が一部で人気を博す中、日産はさらに一歩先を行く大胆な決断を下します。**「エンジンを積まない、完全な電気自動車を量産しよう」**というビジョンを掲げたのです。
開発を指揮したのは、当時の日産CEOカルロス・ゴーン氏。彼は「ゼロ・エミッション社会の実現」というスローガンを掲げ、リーフの開発に巨額の投資を行いました。実際、リチウムイオンバッテリーを自社生産する工場まで設立するなど、日産の本気度は尋常ではありませんでした。
リーフの開発において大きなポイントだったのが、「実用車として通用すること」。単なる実験的な電気自動車ではなく、家族が毎日使える普通のクルマとしてのEVを目指したのです。そのため、コンパクトカーサイズの5ドアハッチバックボディを採用し、走行距離や安全性、快適性などにもこだわりました。
そして2010年12月、初代リーフはついに市販車としてデビュー。ガソリン車にはない静けさと加速感、そして「排気ガスゼロ」という環境性能で大きな注目を集めました。特にアメリカやヨーロッパでは、エコカーとして高い評価を受け、2011年にはワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するという快挙も達成します。
その登場は、まさに自動車の未来を塗り替える一歩でした。リーフの存在は、他メーカーにとっても刺激となり、以後のEV開発競争の幕を切って落とすことになります。EV時代の「扉を開けた」リーフは、単なる新車ではなく、自動車の歴史を動かしたイノベーションだったのです。
EVの未来を変えたリーフ:世界での評価と販売実績
初代リーフは、単なる「EVの先駆け」ではなく、その後の自動車業界全体を動かすほどの影響力を持った存在でした。2010年の発売からわずか1年でグローバル展開を果たし、北米・欧州・日本などの主要市場に投入されると、瞬く間に注目の的に。多くのメディアがリーフを“未来の主役”として報道し、ユーザーからも「ガソリンを使わない感動」を伝えるレビューが次々と寄せられました。
とくに環境意識の高い欧州では、リーフは公共インフラの整備とも連動し、都市部を中心に急速に普及。オランダやノルウェーではEVに対する税制優遇も相まって、リーフが街の風景に溶け込む存在になっていきました。アメリカでも、カリフォルニアをはじめとする西海岸で高い支持を集め、通勤用のセカンドカーや、環境志向の強い層に愛される車として定着していきました。
販売面でも、リーフはEVという新ジャンルとしては異例のヒットを記録。2015年には累計販売20万台を突破し、当時としては世界で最も売れた電気自動車となりました。これは「エンジンのないクルマなんて売れない」という懐疑的な声を完全に覆す結果であり、他メーカーにとっても「EVは商売になる」という確信を与えるものだったのです。
また、リーフは単に車として売れていただけでなく、“技術の日産”を再び世界に印象づけたモデルでもありました。EV専用プラットフォーム、独自の電池制御システム、そしてCHAdeMO方式の急速充電規格の普及など、インフラ面への影響力も大きかったのです。
2017年に2代目へとバトンタッチされた初代リーフですが、その存在意義は今でも色あせていません。今のEVブームの根っこには、間違いなくこの一台のチャレンジがあると言っていいでしょう。リーフがいなければ、テスラも今のように注目されていたかどうか…それほど大きな分岐点となった一台だったのです。
まとめ
初代日産リーフは、ただの新型車ではありませんでした。「エンジンのない量産車」という革命を、誰よりも早く現実にした存在。それは単に環境にやさしいというだけでなく、自動車がこれまで培ってきた価値観——燃料、走り、音、インフラといったすべてを見直す大きなきっかけになりました。
登場当初はまだまだ未成熟だったEV市場。けれどもリーフは、数々の試練を乗り越えて「EVでもここまでできる」という可能性を私たちに示してくれました。航続距離の制限や充電インフラの不足、ユーザーの不安——そうしたハードルすら前向きな挑戦の対象に変えてしまうポジティブな存在感がありました。
そしてその後、世界中の自動車メーカーがこぞってEV開発に参入する時代へとつながっていきます。リーフはもはや“古いEV”ではなく、新時代の扉を開けたパイオニア。その足跡は、今なおすべての電気自動車の中に息づいているのです。