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フィアット・ムルティプラ:ブサイクすぎて愛されるクルマの秘密

フィアットムルティプラ

フィアットムルティプラという名を聞くだけで、少しばかり不思議な気持ちになる方も多いのではないでしょうか。実際に見たことのある人なら、特徴的なフロントフェイスと独特のボディラインに驚き、思わず目を奪われた経験があるかもしれません。日本の街角ではそう頻繁に見かける車種ではないため、その存在はある種の“レア感”を漂わせ、まるで童話の挿絵から抜け出してきたような可愛らしさと奇抜さを兼ね備えています。ムルティプラが初めて登場した当時は、「丸っこいんだけど、どこかカッコ悪い。でも視線をはずせない」という不思議な魅力が自動車ファンの間で話題になりました。しかも、その斬新なスタイリングだけでなく、車内のレイアウトやシートアレンジなど実用性もしっかりと考慮されている点に、一部のファンから熱狂的な支持を集める理由が見え隠れしています。一般的にイタリア車はデザイン性に優れるイメージが強いですが、その中でもムルティプラはまるで芸術家の奔放なスケッチをそのまま形にしてしまったかのような大胆さが目立ちます。実際、アートピースとして現代美術の展示会に置かれても違和感がないのではとさえ思えるほど、その容姿は常識を超えています。それでもヨーロッパの街中では不思議なほど調和し、狭い道を器用に走り抜ける様子が印象的で、思わず「これもイタリアン・デザインの魔術か」と感嘆してしまいます。日本国内で見かける機会はそう多くないとはいえ、一度でも遭遇したら、そのユーモラスなフォルムと堂々とした走りぶりにハッとすること請け合いです。これはある意味、クルマという存在が単なる移動手段以上に、人々の記憶に強く残るアイコンとなり得る証拠ではないでしょうか。ムルティプラが持つ独特の魅力をあらためて紐解いてみることで、あなたのクルマ観にちょっとした刺激が生まれるかもしれません。

前衛的で愛嬌あふれるエクステリアが見る人を虜にする

まずは、ムルティプラのエクステリアデザインを掘り下げてみたいと思います。この車を初めて目にしたとき、多くの人が「どうしてこうなった!?」とつい言いたくなるほど衝撃を受けるようです。フロント部分に寄り添うようについた丸いライトや、まるでタラコ唇のように突き出たバンパーラインが、一般的なセダンやSUVとは一線を画す個性的なシルエットを生み出しています。イタリア車らしい芸術的センスの延長上にあるのか、それとも実験的なデザイン上の遊び心が暴走してこうなったのか、その真相は分かりません。しかし、この前衛的なフォルムゆえに、一度目が合うと忘れられなくなる力を持っているとも言えます。実際にオーナーの方々からは「街中での注目度が高く、子どもから年配の方まで笑顔で見られる」という声が上がることもしばしばあるようです。万人受けするかどうかは別問題として、この車には人々の視線を釘付けにする不思議な力が宿っているのです。もし日本の道路で見かけたら、一瞬驚きつつも、どこか温かみを感じられるかもしれません。もしかすると、大胆さとどこか愛嬌のある形状が、私たちの心にある“可愛いもの好き”の琴線をさりげなく刺激しているのかもしれません。

3人掛けフロントシートが生む独特の広々感と高い実用性

次に、室内空間とシートアレンジについて触れてみましょう。ムルティプラは車内レイアウトでも個性が光ります。フロントシートが3人掛けになっている構造は、日本車ではあまり見られない大胆な設計で、初めて乗り込んだ瞬間に「こう来たか」と新鮮な驚きを感じるはずです。運転席が中央にあるわけではないので、まるでミニバンのような広々した感覚を味わえるのが特徴です。それに加え、後部座席も3人掛けになっているため、コンパクトなボディでありながら最大6名乗車が可能という実用性の高さを誇ります。おまけにシートアレンジも多彩で、背もたれを倒してテーブルのように使ったり、シートを取り外して荷物スペースを拡張したりと、あらゆるシチュエーションに対応できます。これはただの風変わりなクルマではなく、生活に寄り添う乗り物としても緻密に考え抜かれている証といえるのではないでしょうか。イタリアの街で暮らすファミリーが、日常の買い物から週末のレジャーまで便利に使いこなす姿を想像すると、その利便性を自然と納得してしまう気がします。大勢でワイワイと盛り上がるにはもってこいで、「自分でも知らなかった友人の面白い一面が、車内で会話しているうちに垣間見えた」なんていう、ちょっとしたエピソードも生まれやすいかもしれません。

個性的なスタイルが結束を生むユニークなオーナーコミュニティ

最後に、ムルティプラが生み出すコミュニティやカルチャーについてご紹介します。もともと生産台数が多い車種ではないことや、その突飛なデザインの影響もあり、オーナー同士が自然と仲間意識を抱くケースがよく見られます。例えば、街中で同じムルティプラに出会ったときに、見知らぬオーナー同士が手を振り合うという話は決して珍しいものではありません。クルマ好きが集まるイベントでも、ムルティプラ乗りは「お互い物好きだよね」と笑い合いながら、その奇抜な車体を囲んで盛り上がる姿が印象的です。さらに海外のオーナーズクラブでは、自作のステッカーやグッズを作り、お互いに配り合うような交流も盛んに行われているようです。これほど独特な外見を持ちながらも、どこか大らかで親しみやすい雰囲気が漂っているからこそ、人と人との間に緩やかな連帯感を生み出しているのでしょう。かつてはその前衛的なルックスから「世界一ブサイクな車」などという不名誉な称号を与えられたこともあったようですが、その評価にくじけるどころか、むしろ誇りと自信を持って乗り続けるオーナーの姿勢には、どこかイタリアン精神とも通じる強さが感じられます。見た目が少し変わっていても、そこには情熱と愛情が存在し、他人にはないオンリーワンの価値を大切にする。このムルティプラの精神は、日々の生活の中にも通じる重要なヒントを与えてくれているのではないでしょうか。

まとめ

ムルティプラの魅力は単なる“変わった車”という一言では片付けられない奥深さを秘めているように思えます。初見では理解しがたいデザインかもしれませんが、その愛嬌あるルックスに慣れてくると、なぜか愛おしささえ感じるようになる不思議な魅力がそこにはあります。広々とした車内空間や多彩なシートアレンジは、個性的な外観に隠された高い機能性を証明し、オーナー同士が自然と繋がり合うコミュニティの存在はクルマの価値をさらに広げています。イタリア独特の芸術性と合理性が絶妙に融合したこのモデルは、狭い日本の道路環境でも意外と活躍し、見る人に驚きや笑顔をもたらす不思議な力を備えています。もしあなたがクルマに新しい刺激や楽しさを求めるのであれば、このムルティプラという少しクセの強い存在に触れてみる価値は十分にあるかもしれません。見た目に一瞬戸惑っても、その奥にあるイタリアの遊び心や実用性に気づいたとき、クルマとの付き合い方がちょっとだけ変わってくる気がします。唯一無二の存在感と、人の記憶にしっかり刻まれる特別なオーラを持ったこのクルマは、まさにクルマ好きにとってのロマンと発想力をかき立てる豊かな素材なのではないでしょうか。