ジャガー・Eタイプ(シリーズ1)諸元データ
- 生産期間:1961年~1968年
- ボディタイプ:
- 2ドア クーペ
- 2ドア ロードスター
- エンジン仕様:
- 最高出力:
- 最大トルク:
- トランスミッション:
- 4速MT(後期型では一部3速ATも設定)
- サスペンション:
- フロント:独立懸架 ダブルウィッシュボーン+トーションバー
- リア:独立懸架 ロアウィッシュボーン+コイルスプリング
- ブレーキ:
- 4輪ディスクブレーキ
- 車両重量:
- 約1,250~1,320 kg(仕様により変動)
- 最高速度:
- 約240 km/h(150 mph)
- 0-100 km/h加速:
- 約7秒
ジャガー・Eタイプは1960年代に登場し、自動車史上最も美しいと評されるほどの魅惑的なデザインと卓越した性能を兼ね備えたイギリスの名車です。その魅力は単なる自動車としての性能にとどまらず、芸術品としての評価を受けているほどです。Eタイプは、そのエレガントなフォルムと圧倒的な存在感により、数多くのファンを魅了し続けています。当時の自動車界に衝撃を与えただけでなく、その後のデザインのトレンドにも大きな影響を与えました。今回は、この伝説的な名車ジャガー・Eタイプの魅力を深く掘り下げ、3つの視点から詳しくご紹介するとともに、その名前の由来についても触れていきます。
Eタイプの名前の由来は、ジャガーが開発した試作車にアルファベットを使用したコード名を与えていたことに端を発しています。当時、試作段階でアルファベット順に開発プロジェクトが命名されており、Dタイプの後継モデルとして開発されたのが、この「Eタイプ」でした。このような命名規則が定着したことで、ジャガーの歴史において特別な意味を持つモデルとなったのです。
革新的で優美なデザイン
ジャガー・Eタイプの最大の魅力は、なんと言ってもその革新的で美しいデザインにあります。滑らかな曲線で構成されたロングノーズとショートデッキのスタイルは、見る人を惹きつけてやみません。Eタイプのデザインを手掛けたマルコム・セイヤーは、航空機の空気力学の知識を応用し、美しさだけでなく空力的にも優れたデザインを実現しました。その結果、高速走行時の安定性を向上させるとともに、美しいプロポーションをも兼ね備えることに成功しました。また、Eタイプはニューヨーク近代美術館(MoMA)にも収蔵されており、あのエンツォ・フェラーリも「これまでに作られた中で最も美しい自動車」と称賛するほどでした。さらに、ボディラインの美しさは単なる装飾的要素ではなく、高速時の空気抵抗を最小限に抑え、効率的な走行性能を支える重要な役割を果たしています。
卓越した走行性能
ジャガー・Eタイプはそのデザインだけでなく、性能面でも時代をリードしていました。登場時には、60年代でも最高性能の最高速度240km/hを超える高性能スポーツカーとして世界に衝撃を与えました。当時、Eタイプが誇った直列6気筒エンジンは、パワフルでスムーズな加速を提供し、高速走行における安定性にも優れていました。また、Eタイプは改良を重ねることにより排気量が徐々に増えていき、初期の3.8リットルエンジンから、後に4.2リットルへとアップグレードされ、最終的にはV12エンジンを搭載した5.3リットルモデルまで登場しました。排気量が増えたことで、さらにパワフルな走りと余裕のある高速性能が実現されました。これらの技術的な進化は、後に登場したジャガーの高級車XJシリーズにも引き継がれ、ブランドの走行性能向上に大きく貢献しました。
デビュー時に大きな注目を集めた伝説の試乗会
1961年のジュネーブモーターショーでEタイプが発表された際、そのデビューは華々しいものでした。ジャガーの広報責任者であるボブ・ベリーは、展示用車両をロンドンからジュネーブまで平均時速160km以上という猛スピードで運び、メディアや自動車業界から大きな注目を浴びました。さらに、この際にもう一台の試乗車を求められたことから、開発責任者のノーマン・デュイスが急遽ロンドンから自ら運転してジュネーブまで高速走行で駆けつけるという伝説的なエピソードも残されています。このエピソードはEタイプの卓越した性能と信頼性を世界に強く印象付け、その名声をさらに高めるきっかけとなりました。
また、Eタイプは多くの著名人にも愛されました。アメリカの俳優スティーブ・マックイーンはそのライフスタイルにマッチした車としてEタイプを選び、ビートルズのギタリストであるジョージ・ハリスンもEタイプを所有し、その自由で革新的なイメージを音楽活動と結び付けました。さらに、伝説的歌手のフランク・シナトラもEタイプを愛車に選び、「世界最高のクルマだ」と称賛するなど、その美しさと性能に深く惚れ込んでいました。これら著名人の愛車としてのエピソードは、Eタイプが文化的アイコンとしての地位を不動のものにした要素の一つです。
まとめ
ジャガー・Eタイプは、自動車史上稀に見る美しいデザイン、卓越した性能、そして記憶に残るデビューイベントを経て、名実ともにイギリスを代表する名車となりました。その登場から半世紀以上が経過した現在でも、その魅力は色褪せることなく、多くの自動車ファンやコレクターたちの心を掴んで離しません。Eタイプは自動車が単なる移動手段を超え、芸術品として評価され得ることを証明した存在でもあります。これからも時代を超え、多くの人々の憧れとして語り継がれていくことでしょう。