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ランチア・フラミニア:グランドツアラーの誇り

 

ランチアフラミニア 諸元データ

寸法・重量

  • 全長×全幅×全高
    • セダン:4,820mm × 1,730mm × 1,470mm
    • クーペ:4,640mm × 1,740mm × 1,350mm
    • GT/スポルト:4,460mm × 1,720mm × 1,300mm
  • ホイールベース
    • セダン:2,870mm
    • クーペ/GT:2,520mm
  • 車両重量
    • セダン:約1,400kg
    • クーペ/GT:約1,250kg

エンジン

  • 形式V型6気筒 SOHC
  • 排気量:2,458cc(2.5L)、2,775cc(2.8L)
  • 最高出力
    • 2.5Lエンジン:119PS(87kW)/ 5,000rpm
    • 2.8Lエンジン:129-150PS(95-110kW)/ 5,200rpm
  • 最大トルク
    • 2.5Lエンジン:186Nm / 3,500rpm
    • 2.8Lエンジン:206Nm / 3,800rpm
  • 燃料供給方式:キャブレター(シングルまたはトリプル)

駆動系・トランスミッション

シャシー・サスペンション

  • フレーム構造モノコック構造
  • フロントサスペンションダブルウィッシュボーン+コイルスプリング
  • リアサスペンション:ド・ディオンアクスル+リーフスプリング
  • ブレーキ:4輪ディスクブレーキ(1959年以降採用)

性能

  • 最高速度
    • 2.5Lエンジン:約160~175km/h
    • 2.8Lエンジン:約180~200km/h(モデルにより異なる)
  • 0-100km/h加速
    • 2.5Lエンジン:約12秒
    • 2.8Lエンジン:約10秒

その他

  • 燃料タンク容量:70L
  • タイヤサイズ:165R400(当時の高級車によく使われたメトリックサイズ)


イタリアの自動車史に名を刻む名車のひとつとして、「ランチアフラミニア」があります。1957年に登場したこのモデルは、ランチアのフラッグシップとして優雅なデザインと高度な技術を融合させた一台でした。当時、ランチアは高級車市場において独自の地位を築いており、その象徴としてフラミニアは生まれました。イタリアン・グランツーリズモの魅力を詰め込んだこのモデルは、クーペ、コンバーチブル、セダンといった多様なボディバリエーションを持ち、流麗なスタイリングと洗練された走行性能を兼ね備えていました。特にピニンファリーナやツーリング、ザガートといった名だたるカロッツェリアが手掛けたボディは、現在でもクラシックカー愛好家の間で高く評価されています。今回は、そんなランチアフラミニアの誕生背景や技術的な特徴、そしてその魅力について詳しく掘り下げていきます。

【第一のトピック:誕生と開発の背景】
ランチアフラミニアの開発は、1950年代にさかのぼります。先代モデルである「ランチア・アウレリア」は、世界初の量産V6エンジンを搭載し、スポーティかつ洗練されたグランツーリズモとして高く評価されていました。その後継として登場したフラミニアは、さらなる高級感と快適性を追求し、ランチアの新たなフラッグシップとして設計されました。車名の「フラミニア」は、ローマからアドリア海へと続くフラミニア街道にちなんでおり、長距離を優雅に走るグランドツアラーとしての性格を強調しています。

このフラミニア街道は、古代ローマ時代に整備された重要な幹線道路であり、帝国の交通の要として機能していました。ランチアは、この歴史的な街道の名前を冠することで、フラミニアが長距離移動に適した高級グランツーリズモであることを象徴的に表現していました。

フラミニアは、モノコック構造を採用し、優れた剛性と静粛性を実現しました。また、フロントにはダブルウィッシュボーンサスペンションを採用し、スムーズな乗り心地と安定したハンドリングを提供しました。エンジンは2.5Lまたは2.8LのV6エンジンが搭載され、アウレリアの流れを汲みつつも、さらなる出力向上と信頼性の向上が図られていました。

【第二のトピック:デザインとボディバリエーション】
ランチアフラミニアは、その美しいデザインでも知られています。スタンダードなセダンボディはピニンファリーナによってデザインされ、クラシカルでエレガントなフォルムが特徴でした。しかし、フラミニアの魅力はそれだけにとどまらず、多くのカロッツェリアがクーペやスパイダーのデザインを手掛けたことでも特筆すべき点です。

フラミニア・クーペは、ピニンファリーナの手による洗練されたスタイルを持ち、優雅なロングノーズと流れるようなラインが特徴でした。一方、ツーリングが手掛けたフラミニアGTは、軽量なスーパーレッジェーラ構造を採用し、よりスポーティなキャラクターを持っていました。また、ザガートによるフラミニア・スポルトとスーパースポルトは、アルミボディを採用し、よりパフォーマンスを重視した設計となっていました。その特徴的なダブルバブルルーフは、現在でも多くのクラシックカー愛好家を魅了しています。

【第三のトピック:大統領公用車としてのフラミニア】
ランチアフラミニアは、その高級感と格式の高さから、イタリア政府の公用車としても採用されました。特に、イタリア共和国の大統領専用車として特別仕様の「フラミニア・プレジデンシャーレ(Presidenziale)」が製造されました。

この特別モデルは、ピニンファリーナによってデザインされ、通常のフラミニアよりも全長が長く、4ドアのオープントップ仕様となっていました。公務でのパレードや国賓の送迎などに使用され、イタリアの威厳を象徴する車としての役割を果たしました。現在でも数台が保存されており、イタリアの歴史的な公用車として重要な位置を占めています。

【第四のトピック:走行性能と技術】
ランチアフラミニアは、見た目の美しさだけでなく、走行性能にも優れていました。V6エンジンは2.5Lと2.8Lが用意され、最高出力は120~150馬力程度と、当時の高級車としては十分なパワーを発揮しました。トランスミッションは4速MTが基本で、スムーズなギアチェンジと洗練されたドライビングフィールを提供しました。

フラミニアの足回りは、先進的な技術が採用されていました。フロントにはダブルウィッシュボーンサスペンションを採用し、リヤにはド・ディオンアクスルを採用することで、操縦安定性と快適性を両立していました。この設計により、高速巡航時の安定性が高まり、長距離ツーリングにおいても優れた乗り心地を実現していました。

また、ブレーキには当時としては珍しい4輪ディスクブレーキが採用され、高速走行時の制動力を確保していました。これらの技術的な特徴により、フラミニアはスポーティでありながらも、エレガントなグランドツアラーとしての完成度を高めていました。

【まとめ】
ランチアフラミニアは、歴史的な背景、優雅なデザイン、革新的な技術を兼ね備えた名車でした。古代ローマフラミニア街道から名前を取ったことで、そのグランドツーリング性能を象徴し、さらに大統領公用車としての役割を果たしたことで、格式の高さも証明されました。現在、フラミニアはクラシックカーとしての価値が高まり、コレクターの間で特に人気のあるモデルとなっています。その美しいデザインと技術力を持つこの車は、今後も語り継がれることでしょう。