- 車名:日産・フィガロ(Nissan Figaro)
- 販売期間:1991年(限定生産20,000台)
- 型式:E-FK10
- 車両寸法:
- 全長:3,740mm
- 全幅:1,630mm
- 全高:1,365mm
- ホイールベース:2,300mm
- 車両重量:810kg
- エンジン:
- 型式:MA10ET型(直列4気筒SOHCターボ)
- 排気量:987cc
- 最高出力:76ps(56kW)/6,000rpm
- 最大トルク:10.8kgm(106Nm)/4,400rpm
- 駆動方式:FF(前輪駆動)
- トランスミッション:3速オートマチック(AT)
- サスペンション:
- 前:ストラット式
- 後:4リンクコイル式
- ブレーキ:
- 前:ディスクブレーキ
- 後:ドラムブレーキ
- タイヤサイズ:165/70R12
- 燃料タンク容量:40L
- 定員:4名
- ボディタイプ:2ドア・クーペ(電動キャンバストップ採用のオープントップ)
- 主な装備:
- 電動式キャンバストップ
- 本革シート
- エアコン
- パワーウィンドウ
- パワーステアリング
- CD・カセット付きAM/FMラジオ
-
特徴
- クラシカルなデザインと現代的な装備を融合した「ネオレトロ」スタイル
- 限定生産2万台の希少性による高いコレクターズアイテムとしての価値
- コンパクトで取り回しやすく、維持管理やカスタマイズの楽しみも充実
1989年の東京モーターショーで発表され、1991年に発売された日産・フィガロは、レトロなデザインと最先端の技術を融合させたユニークなコンパクトカーです。生産台数はわずか2万台と少なく、日本国内のみならず海外でも高い人気を誇る稀少なモデルとなっています。
フィガロは、その見た目からクラシックカーを思わせる存在ですが、実際には当時の最新技術を備え、日常的に乗れる実用性を持つことも大きな魅力となっています。本記事では、フィガロの魅力を深掘りしながら、レトロデザインとモダンな快適性の融合、希少性とコレクターズアイテムとしての価値、そして現代におけるフィガロの維持とカスタマイズの楽しみ方について詳しく解説していきます。
パイクカーとは?
フィガロは、日産の「パイクカー」シリーズの一環として開発されました。パイクカーとは、1980年代後半から1990年代前半にかけて日産が展開した特別な小型車のシリーズで、レトロなデザインを採用しながらも、最新の技術と快適性を兼ね備えた個性豊かなモデル群を指します。このシリーズには、フィガロのほかに1987年に登場した「Be-1」、1989年に発売された「パオ」、そして商用バンスタイルの「エスカルゴ」が含まれています。
日産がパイクカーという斬新な試みを始めた背景には、当時の日本の自動車市場が成熟期を迎え、個性や遊び心を求めるユーザーが増えていたことがありました。これまでの画一的で機能性重視の量産車とは一線を画し、デザインやライフスタイル提案に焦点をあてたこれらのクルマは、まさに自動車の枠を超えたファッションアイテムとしての価値も持ち合わせていました。
パイクカーのデザイン哲学は「ネオレトロ」とも表現され、過去のクラシックカーの美しいスタイルを現代のテクノロジーで再現し、新たな価値観を創造することにありました。そのため、フィガロを含むパイクカーは、見た目の美しさや懐かしさだけでなく、エアコンやオーディオ、パワーステアリングなどの快適性を備え、毎日のドライブに十分な実用性を兼ね備えていました。
また、パイクカーのもう一つの大きな特徴は、各モデルが限定生産であったことです。その希少性と個性的なデザインにより、新車販売時には購入希望者が殺到し、抽選販売が行われるほどの人気を博しました。とりわけフィガロは、パイクカーシリーズの集大成として登場し、その完成度の高さから、発売から数十年経った現在でも世界各地で高い評価を得ています。
このようにパイクカーとは、自動車の新しい楽しみ方を提案した日産の革新的なプロジェクトであり、フィガロはその中でも特に象徴的な存在と言えるでしょう。
フィガロのレトロデザインとモダンな快適性の融合
日産・フィガロは、自動車の歴史において非常に特異な位置を占めるモデルです。その魅力は単なるレトロな外観だけに留まらず、現代の実用性をしっかりと融合させたことにあると、自動車評論家たちは指摘しています。
フィガロのデザインは1950年代のヨーロッパ車、特にイタリアやフランス車を思わせるような、流麗で丸みを帯びたボディラインが特徴的です。クロームメッキが多用された外装、丸型のヘッドライト、大きく開く電動キャンバストップなどは、ノスタルジックな感性を刺激し、他の車とは一線を画した個性を際立たせています。
しかし、評論家の視点でフィガロが特に評価されるのは、そのクラシカルな見た目に反して、乗車時に感じる快適性や利便性を妥協しなかった点です。インテリアには本革シートが採用されており、高級感と快適性を両立させています。さらに、当時最新だったエアコン、パワーステアリング、パワーウィンドウといった装備が標準で備えられ、日常的な運転においても不自由なく快適なドライビングを提供します。
また、エンジンやシャシーには同時代の日産マーチ(K10型)のコンポーネントが流用されているため、信頼性が高く、維持や修理が比較的容易であることも自動車評論家たちから高く評価されています。実際、多くの評論家はフィガロを「日常使いもできるクラシックカー」と評し、見た目だけでなく実用的な性能を持つ稀有な存在であると認めています。
フィガロはまた、走りの面でもモダンな快適性を実現しています。軽快なハンドリングやスムーズな乗り心地は都市部での運転にも適しており、取り回しの良さから女性ドライバーからも支持を得ました。これらの要素が融合することで、フィガロは単なるレトロ調のファッションカーを超え、実際の所有感や走行時の満足感を高いレベルで提供することに成功しています。
自動車評論家の目から見ても、日産・フィガロはデザイン、機能性、そして所有する喜びという面で見事なバランスを持つモデルであり、その独創的なコンセプトは時代を超えて今なお輝きを放っています。
希少性とコレクターズアイテムとしての価値
日産・フィガロは発売当初から生産台数が限定されたモデルであり、その希少性が年々高まっています。限定生産台数はわずか2万台で、販売方法も抽選方式という特別な方法が採用されました。この特別感と希少性が、後にフィガロを世界的なコレクターズアイテムへと押し上げる大きな要因となりました。
特に英国市場ではフィガロは絶大な人気を博しています。英国は元々クラシックカー文化が根強い国であり、古き良きヨーロピアンデザインを現代的な解釈で再現したフィガロが人々の心を掴みました。フィガロのデザインは英国の景色に自然に溶け込み、そのクラシカルかつモダンな外観が高く評価されています。英国ではフィガロ専門のショップが多く存在し、専門店によるきめ細かなメンテナンスやレストアサービスが充実しているため、フィガロの状態を良好に保つ環境が整っています。このような背景もあって、英国で取引されるフィガロの中古車価格は、日本国内の市場価格を大きく上回るケースも少なくありません。
さらに近年では、アメリカ市場でもフィガロが高い関心を集めています。アメリカには25年ルールという法律があり、製造から25年を超えた自動車は規制緩和により輸入が自由となります。このルールの適用に伴い、フィガロのアメリカ市場への輸入が増加し、個性豊かなデザインや実用性が評価されて、需要が急増しています。アメリカ国内ではクラシックカーを投資対象として購入する富裕層も多く、将来的な価値の上昇を見越してフィガロを購入するケースも増えています。
日本国内においても、フィガロの希少性は確固たるものになっています。フィガロのデザインは普遍的であり、流行に左右されない魅力があります。現在でもオリジナルの状態を保った低走行の個体や希少カラーのフィガロには高値がつきます。最近ではオリジナルコンディションを維持した車両がますます減少傾向にあり、それがさらに希少価値を押し上げています。また、熱心なコレクターや自動車愛好家の間では、完全オリジナルの状態を保つことが美徳とされ、状態の良い車両にはプレミア価格がつく傾向にあります。
フィガロの市場価値は単に希少性だけではなく、その独特のデザインと存在感によって維持されています。その独自性が認められ、さまざまなクラシックカーイベントやモーターショーでもフィガロは注目を浴びています。結果として、フィガロの市場価値はこれからも安定した上昇を続けることが予想され、多くの自動車コレクターにとって魅力的な資産となっています。
こうした背景から、フィガロは単なるクルマとしてだけでなく、文化的・資産的価値を兼ね備えた特別な存在としての地位を確立しているのです。
現代におけるフィガロの維持とカスタマイズの楽しみ方
フィガロの魅力は、そのデザインや希少性だけにとどまらず、現代における維持やカスタマイズの楽しさにもあります。1990年代初頭に生産された車両であるため、維持に不安を感じる人も少なくありませんが、実際にはフィガロは意外にも維持管理がしやすい車種です。その理由のひとつに、エンジンや足回りなどの主要パーツが同時代のK10型日産マーチと共通していることがあります。これにより、エンジン関連部品を中心とした基本的なパーツの入手性は非常に良好であり、専門の修理工場やパーツ販売業者も多く存在しています。
また、日本国内だけでなく英国など海外にもフィガロ専門の修理ショップが多数あり、特にイギリスでは独自に再生産されたオリジナルパーツが豊富に流通しています。輸入代行サービスやオンラインショップを通じて容易に部品を調達することが可能なため、長期的な維持管理において特段の困難を感じることはありません。
フィガロの所有者の間では、カスタマイズの楽しみも人気です。フィガロはもともとレトロなスタイルを持つため、過度に現代的なパーツを加えるよりも、車両本来の個性を尊重したカスタマイズが主流となっています。例えば、オリジナルの外観を保ちながら内装をレストアしたり、内装のカラーリングを変更することで自分だけの一台を演出したりするオーナーが多く見られます。
また、クラシカルなデザインをより引き立てるために、ホワイトリボンタイヤを装着したり、クロームパーツを増やすことで華やかさを加えたりするカスタマイズも人気です。フィガロの外装カラーを変更したい場合には、再塗装よりもラッピングフィルムを使用することで元の塗装を保護しつつ、容易にデザイン変更が可能となります。こうしたフィルム施工は、元の価値を損なわずにオリジナルデザインへ簡単に戻せるため、フィガロの資産価値を重視するオーナーにも好まれています。
さらに、フィガロのオーナーコミュニティは活発で、定期的なミーティングやイベントが開催されています。こうした場では、カスタマイズに関する情報交換やパーツ入手に関するアドバイスを得ることができるため、フィガロを所有する楽しさをより一層深めることが可能です。
このように、フィガロの維持とカスタマイズは、単なる車両管理を超えて一種のライフスタイルを形成する楽しみへと発展しています。オーナー自身が手を加え、世界に一台だけのフィガロを作り上げる喜びは、他の車にはない特別な魅力であり、その楽しさこそがフィガロが今もなお多くの人に愛される理由の一つでしょう。