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ホンダ・N360:「Nコロ」の愛称で親しまれた名車の秘密

ホンダ・N360 諸元データ

  • メーカー:ホンダ
  • 車種名N360
  • 販売期間:1967年~1972年
  • ボディタイプ:2ドアセダン / 3ドアワゴン(N360ツーリング)
  • 駆動方式:FF(前輪駆動)

エンジン

  • エンジン型式:空冷4ストローク直列2気筒
  • 排気量:354cc
  • 最高出力:31PS(23kW)/ 8,500rpm
  • 最大トルク:3.0kgf·m / 7,000rpm
  • 燃料供給方式:キャブレター
  • 燃料種類:ガソリン

トランスミッション

  • 変速機:4速MT / 3速AT

車体寸法

  • 全長:2,995mm
  • 全幅:1,295mm
  • 全高:1,345mm
  • ホイールベース:2,000mm
  • 車両重量:500kg(グレードにより異なる)

足回り

  • サスペンション(前):独立懸架・トレーリングアーム
  • サスペンション(後):独立懸架・トレーリングアーム
  • ブレーキ(前/後):ドラム / ドラム
  • タイヤサイズ:4.80-10

燃費性能

  • 燃費:約20~25km/L(カタログ値)

価格(当時)

  • 新車価格:313,000円(標準モデル)

特徴

  • ホンダ初の量産軽自動車として1967年に登場し、日本の軽自動車市場に革命をもたらした。
  • 高性能な空冷4ストロークエンジンを搭載し、軽自動車ながらもスポーティな走行性能を実現。
  • 英国のミニを参考にしたFFレイアウトを採用し、広い室内空間と優れた操縦安定性を両立。
  • 「Nコロ」の愛称で親しまれ、多くのユーザーに支持された。
  • オイルショック時に経済性が再評価され、販売台数を伸ばした。

 

 

 

1967年に登場したホンダ・N360は、日本の自動車市場に大きな変革をもたらしたモデルです。ホンダが二輪車メーカーとして成功を収めた後、自動車市場へ本格参入するために開発された初の本格的な四輪乗用車であり、軽自動車というカテゴリーに新たな基準を打ち立てました。

当時の軽自動車は、経済性を重視したシンプルな設計が主流でした。しかし、N360はそれまでの概念を覆し、高性能なエンジン、優れた実用性、そしてスタイリッシュなデザインを兼ね備えた画期的なモデルとして登場しました。軽量なモノコックボディに空冷2気筒エンジンを搭載し、驚くほどの加速性能を発揮しました。さらに、前輪駆動(FF)レイアウトを採用し、室内空間を最大限に活用する設計がなされました。

また、N360には「Nコロ」という愛称がつけられ、親しみを込めて呼ばれていました。「N」の由来は「Norimono(乗り物)」の頭文字からきており、ホンダが開発した新しい小型車のコンセプトを表しています。さらに、N360の設計には英国のミニを参考にした要素が多く見られ、前輪駆動やコンパクトなボディ設計など、革新的な技術が採用されました。

本記事では、N360の「エンジンと走行性能」「デザインと実用性」「市場での評価と影響」「ユーザーユニオン事件」の4つの観点から、その魅力を詳しく解説していきます。

1. 高性能なエンジンと優れた走行性能

N360が当時の軽自動車市場で革新的だった要因の一つは、そのエンジン性能にあります。それまでの軽自動車は、空冷または水冷の2ストロークエンジンが主流でした。しかし、ホンダはN360に、オートバイの技術を応用した4ストロークの空冷2気筒エンジンを搭載しました。

排気量354ccのエンジンは、最高出力31馬力を発生し、これは当時の軽自動車としては驚異的な数値でした。特に、高回転までスムーズに回る設計が特徴で、他の軽自動車とは一線を画す走行性能を実現しました。さらに、トランスミッションは4速MTを採用し、スポーティな運転フィールを楽しむことができました。

このエンジンの搭載により、N360は最高速度115km/hを達成し、街乗りだけでなく高速道路でも十分なパフォーマンスを発揮しました。当時の軽自動車としては異例の性能を誇り、N360は「走りを楽しめる軽自動車」として、多くのユーザーに支持されました。

2. スタイリッシュで実用的なデザイン

N360のデザインは、単に機能的であるだけでなく、スタイリッシュさも兼ね備えていました。ホンダはこの車を「小さな高級車」として位置づけ、単なる大衆車ではなく、魅力的なデザインを追求しました。

外観はコンパクトながらバランスの取れたフォルムを持ち、丸みを帯びたボディラインが特徴的です。また、ヘッドライトやグリルのデザインも洗練されており、小さいながらも堂々とした存在感を持っていました。

内装においても、シンプルでありながら機能的なデザインが採用されました。ダッシュボードには視認性の高いメーター類が配置され、運転のしやすさを追求。さらに、当時の軽自動車では珍しいヒーターやラジオが装備されるなど、快適性も確保されていました。

3. 市場での評価と自動車業界への影響

N360は発売と同時に市場で大きな成功を収めました。軽自動車の概念を変えるような高性能エンジンと優れた実用性により、多くの消費者の注目を集め、ホンダにとっても四輪車市場への本格参入を成功へと導いたモデルとなりました。

特に、1973年のオイルショックの際には、N360の経済性が再評価され、多くの消費者が燃費の良い軽自動車を求めるようになりました。これにより、N360オイルショックの影響を受けるどころか、むしろ販売台数を伸ばす結果となりました。

4. ユーザーユニオン事件とホンダの対応

N360の成功の裏には、ユーザーとメーカーの関係における一つの事件もありました。それが「ユーザーユニオン事件」です。N360の初期モデルにはいくつかの技術的欠陥が指摘され、それに不満を持ったユーザーが集まり、ホンダに対して改善を求める運動を展開しました。

ホンダはこの事態を真摯に受け止め、改良型のN360を早期に投入し、品質向上に努めました。この対応により、ホンダの企業姿勢はユーザーの間で高く評価され、後のホンダ車の信頼性向上にもつながりました。

まとめ:革新的な軽自動車としての功績

ホンダ・N360は、軽自動車市場に新たな基準を打ち立てた革新的なモデルでした。4ストロークエンジンを搭載し、高い走行性能を実現したこと、スタイリッシュで実用的なデザインを採用したこと、そして市場での成功によってホンダの四輪車開発を加速させたことなど、その功績は多岐にわたります。

また、ユーザーユニオン事件やオイルショックという社会的要因に対しても、ホンダは適応しながら成長を遂げました。N360が築いた基盤は、今のホンダの軽自動車にも受け継がれており、日本の自動車史において重要な存在であり続けています。