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走る喜びの象徴:プジョー・106の魅力

プジョー 106 

  • 販売期間:1991年 ~ 2003年
  • ボディタイプ:3ドア / 5ドア ハッチバック
  • 駆動方式:FF(フロントエンジン・フロントドライブ)

エンジン(主なバリエーション)

  • 1.0L 直列4気筒(TU9)

    • 排気量:954cc
    • 最高出力:45PS ~ 50PS
    • 最大トルク:7.2kgf·m ~ 7.6kgf·m
  • 1.1L 直列4気筒(TU1)

    • 排気量:1,124cc
    • 最高出力:60PS
    • 最大トルク:9.0kgf·m
  • 1.4L 直列4気筒(TU3)

    • 排気量:1,360cc
    • 最高出力:75PS ~ 95PS
    • 最大トルク:11.0kgf·m ~ 12.2kgf·m
  • 1.6L 直列4気筒(TU5)

    • 排気量:1,580cc
    • 最高出力:88PS ~ 120PS
    • 最大トルク:13.8kgf·m ~ 14.5kgf·m
  • 1.6L 直列4気筒 16V(S16 / GTI)

    • 排気量:1,587cc
    • 最高出力:120PS / 6,600rpm
    • 最大トルク:14.5kgf·m / 5,200rpm
  • 1.5L 直列4気筒 ディーゼル(TUD5)

    • 排気量:1,527cc
    • 最高出力:57PS
    • 最大トルク:11.8kgf·m

トランスミッション

  • 4速MT(初期モデル)
  • 5速MT(標準モデル)
  • 3速 / 4速AT(一部グレード)

寸法・重量

  • 全長 × 全幅 × 全高:3,565mm × 1,595mm × 1,380mm
  • ホイールベース:2,385mm
  • 車両重量:790kg ~ 960kg(グレードによる)

足回り

  • 前サスペンション:マクファーソンストラット式
  • 後サスペンショントーションビーム
  • ブレーキ(前後):前ディスク / 後ドラム(標準モデル)、前後ディスク(GTI / S16)

特徴

  • プジョー205の後継として登場し、コンパクトながら軽快な走りが特徴
  • S16(GTI)はホットハッチとして高い評価を受ける
  • 2003年にプジョー206へバトンタッチする形で生産終了

 

かつて、クルマは単なる移動手段ではなく、走る喜びそのものを提供してくれる存在でした。特に1990年代は、ホットハッチと呼ばれる小型スポーツカーの黄金時代。軽量でパワフル、そしてシンプルな構造を持つこれらのクルマは、運転の楽しさをダイレクトに伝えてくれました。

そんな時代に誕生したのが、プジョー・106。可愛らしいルックスとは裏腹に、驚くほどの俊敏な走りを誇るこのコンパクトカーは、いまなお世界中のクルマ好きの心を掴んで離しません。

この記事では、プジョー・106の誕生秘話から、技術的な特徴、そして伝説となったRallyeやGTiモデルまで、その魅力を余すことなくお伝えします。あなたもきっと、106の虜になることでしょう。

1. プジョー・106誕生のドラマと市場投入の背景

1991年、フランスの自動車メーカー・プジョーが生み出したコンパクトハッチバック、106。このクルマが誕生した背景には、当時のヨーロッパ市場の熾烈な小型車競争がありました。ライバルたちはルノー・クリオ、フォード・フィエスタ、フォルクスワーゲン・ポロといった強敵揃い。

そんな中、プジョーは“都市で使いやすく、キビキビと走るコンパクトカー”という新たなコンセプトを打ち出します。結果として誕生したのが106であり、その小さなボディの中には、プジョーの職人魂が詰め込まれていました。

当初は3ドアモデルのみの展開でしたが、翌1992年には5ドアモデルが追加されることで、ファミリー層にもアピール。可愛らしい見た目の裏には、プジョーらしい走行性能へのこだわりが潜んでいたのです。

2. 技術的な妙技と多彩なエンジンバリエーション

プジョー・106の魅力は、何といってもその軽快な走りにあります。PSAグループのプラットフォームを活かし、剛性の高いシャシーと軽量ボディを実現。全長3.56mというコンパクトさにもかかわらず、驚くほどの安定感と俊敏なハンドリングを誇りました。

エンジンのバリエーションも実に豊富。1.0Lから1.4Lのガソリンエンジンに加え、1.4Lと1.5Lのディーゼルエンジンも用意され、経済性にも優れていました。しかし、やはりファンの心を掴んだのは、1993年登場のプジョー・106 XSi。軽量ボディに1.4L(後に1.6L)エンジンを積み、スポーティな走りを提供するモデルでした。

そして、さらなる進化を遂げたのが1996年のプジョー・106 Rallye。徹底した軽量化とレスポンスの良いエンジンで、ピュアスポーツの魅力を存分に味わえる1台となりました。

3. 伝説のホットハッチ、106ラリーとGTi

「走りを楽しむためのマシンが欲しい」。そんな願いを具現化したのが、106 Rallyeと106 GTiでした。

106 Rallyeは、無駄を徹底排除したストイックなモデル。エアコンやパワーウィンドウすら削ぎ落とし、わずか800kgという驚異的な軽量ボディを実現。搭載された1.3L 8バルブエンジンは、100馬力という数字以上にダイレクトな走行フィールを提供し、ワインディングやサーキットで抜群の楽しさを発揮しました。

一方で、より高性能を求めるなら106 GTi(海外名106 S16)。1.6L 16バルブエンジンから120馬力を引き出し、軽量ボディとの組み合わせにより、小さな弾丸のような加速を実現。まさに、プジョー・205 GTiのDNAを受け継ぐ、次世代のホットハッチでした。

4. 106の現在の評価とコレクターズアイテム化

2003年に生産終了となった106ですが、いまやクラシックカー市場では貴重な逸品となっています。特に、オリジナル状態の106 Rallyeや106 GTiは高値で取引され、コレクターズアイテムとしての価値が年々上昇中。

理由は単純。今の時代にはない、軽量でピュアなホットハッチだからです。環境規制や安全基準の関係で、近年のコンパクトカーはどんどん重量化していますが、106のようなシンプルかつダイレクトなフィーリングを持つ車は、もはや絶滅寸前。

そして、現存する個体の多くは、エンスージアストによって大切に維持され、レストア市場でも高い人気を誇ります。フランス国内はもちろん、イギリスや日本でもファンの間でコミュニティが形成され、106の魅力を語り継ぐイベントが開催されることも。

まとめ

プジョー・106は、単なるコンパクトカーではありません。それは、フランスが生んだ最後のピュアなホットハッチであり、多くのドライバーを虜にした“走る楽しさ”の象徴。軽量なボディ、俊敏なハンドリング、そしてエンジニアの情熱が生み出した独特のフィーリング。

もしあなたが、現代のクルマにはない純粋なドライビング体験を求めるなら、106は最高の選択肢かもしれません。そして、この伝説はこれからも、クルマ好きたちの間で語り継がれていくことでしょう。